魔法のいらないシンデレラ
ロビーのソファに座り、撮ってもらったばかりの写真を、カメラの小さな画面で見せてもらう。

「すてきねえ。古谷さん、やっぱりとてもお上手よ」
「ありがとうございます。あ、青木さんがいらっしゃいました」

佐知と瑠璃が古谷の視線を追うと、フロントの横から、爽やかな笑顔の男性が颯爽とこちらに向かって来るのが見えた。

コンテスト授賞式で司会をしていたあの人に間違いない。

「お待たせ致しました。古谷様、そして澤山様、瑠璃様、本日はお越し頂き誠にありがとうございます」

丁寧にお辞儀をしてから、ふと、古谷のカメラに目を向ける。

「何やらお話が弾んでいるようでしたが、もしや良いお写真でも?」
「ええ。先ほどこちらの桜並木で、古谷さんに撮って頂きましたの」

佐知の言葉に、へえと青木が興味深そうに言う。

「よろしければ、私も拝見出来ますか?」

異議はなく、古谷がカメラを操作して何枚か青木に見せた。

「はあ、これはまたなんと美しいお写真」

食い入るように見つめる青木は、やがて顔を上げると三人を見渡した。

「わたくしが本日皆様にお伝えしたいのが、まさにこのようなお写真のことなのです」

そう言って、ロビーラウンジに案内された。
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