魔法のいらないシンデレラ
年に1度、毎年この季節に開催される同窓会。

今年は、佐知の会長挨拶と乾杯の音頭で幕を開けた。

このホテルで1番広いとされるバンケットホールは、美しく着飾ったご婦人やご令嬢で華やかに賑わい、天井のシャンデリアと相まって、まさに豪華絢爛といった様子だった。

美雪と藍のもとにも、次々と友人が声をかけに来る。

少し手持ちぶさたになった瑠璃が、お料理取ってくるね、と高志に声をかけると、じゃあ俺も、と一緒に立ち上がった。

二人で、豪華な料理がきれいに並ぶブュッフェカウンターに行く。

料理を選んでいるのは、瑠璃と高志だけだ。

皆、友人との久しぶりの再会を喜ぶあまり、料理はそっちのけらしい。

美味しそうなローストビーフをシェフに切り分けてもらっていると、すぐ後ろのテーブルから、まあ!ごきげんよう!と、ひときわ大きな声が聞こえた。

すると隣の高志が肩でくくっと笑いを堪え始め、瑠璃は怪訝そうな顔を向ける。
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