魔法のいらないシンデレラ
「はい、あの。レストランのハヤシライスって…テイクアウト出来ないでしょうか」
「え、ハヤシライスって、うちのホテルの名物の?」
「はい。屋台であの美味しいハヤシライスを売っていたら、私なら絶対買います」
「あー、そりゃ買うわ。俺も買う」
「だよな。あのハヤシライスを食べたくても、レストランに入るのはちょっと勇気がいるし」

皆の頷く顔を見ながら、青木は少し考え込む。

「ただなあ、ホテルとしてどうなんだろう。格が下がらないかな。料理長は渋るかも…」

確かに…と、皆も考え込む。

「あの、安っぽくならなければいいんじゃないでしょうか?」

瑠璃が恐る恐る口を開く。

「パッケージを工夫して、他の屋台とはひと味違う感じに出来れば…」

瑠璃の提案に、
「おお、それいいかも」
「高級感ある感じのな」
「インスタ映えするものとか?」
お互い顔を見合わせながら、口々に意見を言う。

「でも、パッケージにコストかかり過ぎるのもなあ。売上利益はきっちり出したいし」
「あの。それでしたら、市販の良さそうな容器に、ホテルの名前やロゴをデザインしたシールを貼るのはどうでしょう?デザイン次第では高級感を出せると思います」

奈々の提案に、皆の顔は明るくなった。

「よし、それでいってみよう」
「俺、パッケージをリサーチします」
「シールデザイン、奈々ちゃん頼むな」
「はい!」
「じゃあ、準備出来たら、調理部に提案してみるよ。いい返事もらえるといいな」

青木の言葉に、皆は大きく頷いた。
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