悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
*
魔石に魔力を込めすぎて気絶した後。目を開けると、お父様が恐ろしい形相で私を見下ろしていた。
部屋の中は暗く、メイドも見当たらず静まり返っているので、もう深夜なのだろう。暗闇で見上げる父は迫力があって大層怖い。よい子は泣いてしまうレベルだ。
「お、おはようございます、お父様」
「目が覚めたか」
「は、はい……ご心配をおかけしました……」
「リディ、お前が倒れたと聞くたびに、肝が冷える。頼むから気をつけてくれ」
「も、申し訳ありません」
ものすごく怒っている顔なのに、ものすごく心配してくれている。
お父様は私が目を覚ましたことで、緊張が少しほぐれたのか、「ふぅ」と息を吐いた。
そして、気絶する前に私が作り出した、白い石を取り出した。
「それは……」
「お前が聖魔法を込めた石だ」
「聖魔法を込めた石……?」
「ディーンからお前が倒れる直前、聖魔法の光が見られたと聞いている。恐らくお前が魔力を込めすぎて聖魔法を展開したために、色が変わったのだろう」
「まぁ、すごい! 聖魔法を込めると白い石になるのですね!」
わざと明るい声を出してみたが、お父様の眉間の皺は渓谷のような深さを記録した。そして深夜の為か少しだけ抑えた、しかし地を這うような声で私を叱る。
「すごくなどない! 気絶するまで枯渇させるのは危険すぎる! 無茶をしてはならぬとあれ程言ってきたのに……!」
「はいぃ! 申し訳ありません……!」
お父様は、この聖魔法を込めた白い石を公爵家で徹底的に調べることになったと告げた。調査結果はいずれ王家に報告することになるだろうとのこと。事故的に作ってしまった物だが、何かに役立つのだろうか。
「ともかくゆっくり休みなさい」
「はい……」
お父様は石のことを説明するとそう言って部屋を出て行った。私がいつまでも目覚めなかったら、朝までいらっしゃるつもりだったのかしら。
*
翌朝は、鬼の形相をしたお母様に叱られた。公爵家令嬢たるものもう少し落ち着いて行動しなさいと、剣術やマナーの授業の時間も潰されて延々と怒られてしまった。しかし、食事やお茶の時間は確保してくださったので、要するに今日は休めということなのだろう。
その優しさに胸がぎゅっとなる。
お母様が魔物の瘴気に当てられて病んでしまう未来。
それはもう回避しているのだろうか? それともこれから起こるのだろうか。
どうしたら、お母様を守れるのだろう。お母様一人を守れなかったとしたら、この国なんてとても守れるわけがない。もちろん、私の命だって。
久々にゆっくり過ごしたことで、考え込んでしまった。
「お嬢様?」
「メアリー……」
メアリーは幼い頃からこの屋敷に支えてくれているメイドの一人だ。頼りになる姉のような存在で、お母様と違っていつも優しい。木登りして擦り傷を作っても、叱らず優しく手当てしてくれる。
「今日はせっかくのお休みですから、奥様と一緒に外出されてはいかがですか?」
「そうね。お部屋でじっとしていると悪い想像ばかりしてしまって……」
そうして私はお母様と一緒に街に買い物に出かけることになった。
普段剣術や魔法の稽古ばかりしていて、なかなかドレスや装飾品に興味を示さないので、お母様はつまらなかったようだ。その気持ちを汲んだメアリーの提案であり、お母様のご機嫌もようやく良くなったのだった。
魔石に魔力を込めすぎて気絶した後。目を開けると、お父様が恐ろしい形相で私を見下ろしていた。
部屋の中は暗く、メイドも見当たらず静まり返っているので、もう深夜なのだろう。暗闇で見上げる父は迫力があって大層怖い。よい子は泣いてしまうレベルだ。
「お、おはようございます、お父様」
「目が覚めたか」
「は、はい……ご心配をおかけしました……」
「リディ、お前が倒れたと聞くたびに、肝が冷える。頼むから気をつけてくれ」
「も、申し訳ありません」
ものすごく怒っている顔なのに、ものすごく心配してくれている。
お父様は私が目を覚ましたことで、緊張が少しほぐれたのか、「ふぅ」と息を吐いた。
そして、気絶する前に私が作り出した、白い石を取り出した。
「それは……」
「お前が聖魔法を込めた石だ」
「聖魔法を込めた石……?」
「ディーンからお前が倒れる直前、聖魔法の光が見られたと聞いている。恐らくお前が魔力を込めすぎて聖魔法を展開したために、色が変わったのだろう」
「まぁ、すごい! 聖魔法を込めると白い石になるのですね!」
わざと明るい声を出してみたが、お父様の眉間の皺は渓谷のような深さを記録した。そして深夜の為か少しだけ抑えた、しかし地を這うような声で私を叱る。
「すごくなどない! 気絶するまで枯渇させるのは危険すぎる! 無茶をしてはならぬとあれ程言ってきたのに……!」
「はいぃ! 申し訳ありません……!」
お父様は、この聖魔法を込めた白い石を公爵家で徹底的に調べることになったと告げた。調査結果はいずれ王家に報告することになるだろうとのこと。事故的に作ってしまった物だが、何かに役立つのだろうか。
「ともかくゆっくり休みなさい」
「はい……」
お父様は石のことを説明するとそう言って部屋を出て行った。私がいつまでも目覚めなかったら、朝までいらっしゃるつもりだったのかしら。
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翌朝は、鬼の形相をしたお母様に叱られた。公爵家令嬢たるものもう少し落ち着いて行動しなさいと、剣術やマナーの授業の時間も潰されて延々と怒られてしまった。しかし、食事やお茶の時間は確保してくださったので、要するに今日は休めということなのだろう。
その優しさに胸がぎゅっとなる。
お母様が魔物の瘴気に当てられて病んでしまう未来。
それはもう回避しているのだろうか? それともこれから起こるのだろうか。
どうしたら、お母様を守れるのだろう。お母様一人を守れなかったとしたら、この国なんてとても守れるわけがない。もちろん、私の命だって。
久々にゆっくり過ごしたことで、考え込んでしまった。
「お嬢様?」
「メアリー……」
メアリーは幼い頃からこの屋敷に支えてくれているメイドの一人だ。頼りになる姉のような存在で、お母様と違っていつも優しい。木登りして擦り傷を作っても、叱らず優しく手当てしてくれる。
「今日はせっかくのお休みですから、奥様と一緒に外出されてはいかがですか?」
「そうね。お部屋でじっとしていると悪い想像ばかりしてしまって……」
そうして私はお母様と一緒に街に買い物に出かけることになった。
普段剣術や魔法の稽古ばかりしていて、なかなかドレスや装飾品に興味を示さないので、お母様はつまらなかったようだ。その気持ちを汲んだメアリーの提案であり、お母様のご機嫌もようやく良くなったのだった。