悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
***

(全然うまくいかないわ……)

 まず私は、クラスメイトと仲良くなろうと試みた。話しかけると、みんな当たり障りのないことは、にこやかに答えてくれる。だが、私の顔が怖いからかクリス様の婚約者だからか、どこかよそよそしいままだ。

(どうしたらお友達って出来るのかしら)

 小さな頃からお兄様と常に一緒で、お兄様と稽古して勉強して修行してきた私にとって、同年代の女子とどんな話をすればいいかわからなかった。ファッションのこともあまり興味がないし、そもそも身体を動かさずに過ごすのが苦手で、おしゃべりも得意じゃない。本人がいないところで誰かの噂話をするのも好きではない。

 王太子妃教育の中で、社交やお茶会の話術だって勉強してきた。だがそれは、取り繕った私の姿。未来の王太子妃に媚を売ろうと猫撫で声で寄ってくる子もいるが、どうせなら本音でぶつかり合えるソウルメイトがほしい。
 
 しかし、どうしたらそんな素敵な友人に出会えるのかわからず、今日は公爵邸に帰ってきてしまった。

「ねぇメアリーには、仲の良いご友人はいるの?」

 サロンでお茶を飲みながら、まずは身近な人の友達事情を聞いてみることにした。メアリーは丁寧に私のお茶のおかわりを淹れつつ、「そうですねぇ」と思案している。

「メイド仲間が友人も兼務していますね。お休みの日はお買い物とか一緒に行ってます。あとは故郷の幼馴染がたまに手紙をくれますよ」
「まぁ、幼馴染!」

 思えば私には幼馴染はいない。いつもお兄様と稽古してきたし、同じ年頃の子と会う機会があっても、この見た目のせいなのか仲良くはなれなかった。
 羨ましい。幼馴染、素敵な響き。

「今は街のパン屋さんに嫁いで、昨年女の子を産んだので忙しそうで。なかなか会えませんが、たまにお互いの近況を報告し合っています」

 その時に報告するメアリーの近況の内容が気になる。主人である私の悪口だったら泣ける。

「もしかして、お嬢様もついにお友達が出来たんですか?」
「違うわ。これから作るのよ」
「へ?」

 悩んでいても仕方がない。とにかく何か作戦を練って友達を作ろう。ヒロインの恋愛模様を見学するのも一人より複数の方が自然だし、神スチルの素晴らしさを誰かと共有してみたい。
 何より友達の数くらいはクリス様に勝ちたい。
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