悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
とんでもない濡れ衣を着せられた。こうやっていじめていなくてもいじめたことにされて、冤罪で捕まるというシナリオなのかしら!? そんなのごめんだわ!
「リディア様がお誘いしてくれたのに、ちっとも上手くいかなかったじゃないですか!」
「わ、悪かったわ。生徒会室がダメだとは思わなくて……見せつけたかったわけじゃないのよ! わたくしは、ステラさんとお友達になりたいだけで……!」
「私がクリストファー殿下と仲良くしたいとか言ったから、嫌がらせするんですね!」
待って待って! そんな大きな声で言わないでー!
「ち、違うわ! お願い、わたくしの話を聞いて……!」
「うっ……うーっ」
「!」
ステラが泣き出してしまった。やばい。こんな可愛い子を泣かしている目つきのキツい公爵令嬢。あぁ、悪役令嬢認定されてしまう! どうしましょう!?
「はいはい、ストップ」
「「!?」」
「不可抗力だからな。このタイミングで出てこないとギャラリー増えるから。不可抗力。分かった?」
「?」
艶やかな短い黒髪のその人は、燃えるような赤い瞳で強く私に訴えてきた。『不可抗力』だと念押ししてくるが、何のことだか分からない。彼に会ったのはこれが三度目。学園の生徒のはずなのに、なかなかお見かけしないので不安だったが、やっと会えた。
「アラン様!」
ヒロインであるステラが嬉しそうに彼を見つめた。アラン様もステラのことを知っているようで、彼女の頭をぽんっと撫でる。
「いいか。お前が泣くと、この方がいじめているみたいになるだろ。気をつけろ」
「え……は、はい」
「コイツが落ち着くまで俺は側にいるから、アンタは生徒会室に戻っておけ」
「は、はい。お任せいたしますわ」
「不可抗力だから!」
何が何だか分からないけれど、アラン様に助けられてしまった。しかも、ヒロインと二人きりにさせることにも成功したわ! 本当はこのまま二人の様子を物陰から眺めたい! でもアラン様に不審に思われそうだし、私に気づいてまた泣かれたりしたら、本当にいよいよいじめていると疑われてしまう。仕方なく私は生徒会室に戻ることにした。