悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
*
翌日。まずはステラと仲直りをして、アラン様との恋路をもっと応援しなくてはと心に決めた。
そして放課後、私はステラを探すことにしたのだが、どこにも見当たらない。校舎にも中庭にも、ステラが住んでいる学生寮にも帰っていなかった。
(どこにいるのかしら)
「ふふっ」
遠くで可愛らしい声がした。何やら楽しそうに笑っている声だ。あの声はもしかしたらステラのものでは?
声が聞こえた校舎裏の方を覗くと、驚くべき光景を目の当たりにしてしまった。
「よろしく頼む」
「はーい」
(クリス様とステラ!?)
信じられないことに、二人きりでいた。その上、クリス様が他の女の子にあんなふうに笑いかけるだなんて!
衝撃でその場を動けない。だが、話がちょうど終わったのか、クリス様がこちらにやってくる。
私は急いでその場を離れた。
「はぁっ! はぁ!」
全速力で走ったので息が切れる。胸が、苦しい。
ついに、この時が、来てしまった。
「っ!」
頬を伝う涙は、急いで拭う。ヤキモチなんて妬いちゃダメ。嫌がらせをしてしまったら、私は死んでしまう。生き残ることができたら、また何か違う世界が広がるはずだ。クリス様が全てじゃない。だから泣いちゃ、妬いちゃだめだ。
「……ふっ……うぅっ……」
誰もいない校舎で一人、涙がポタポタとスカートを濡らした。
*
「リディア様っ」
「!?」
クリス様と二人で裏庭にいたのを目撃した翌日、何もなかったかのようにステラが話しかけてきた。
「私、リディア様とお友達になったんですよね?」
「え、ええ……そうね」
銀の髪はゲームのスチル通り、片方だけ三つ編みにしていて、その小さな顔が際立っている。可愛い。こんな可愛い子が自分に好意を持ってくれたら、そりゃ婚約者がいたってクラっとしてしまうだろう。
今更だがステラと友達になったことで、クリス様との仲を相談されたりしたらどうしようと不安になった。
「ちょっと色々教えてもらえます?」
メモ帳とペンを携えたステラが、意気揚々とインタビューしたいと言うのだ。
何がしたいのだろう。敵前調査かしら。
「えーっと、まずは、お好きな食べ物は?」
「え、ええと、甘いもの……かしら」
「お好きな飲み物は?」
「イルランド産の紅茶ね。こんなことを聞いてどうするの?」
「イルランド産、と。まぁまぁ、良いじゃないですか! お好きな本は?」
「……花と暮らす楽しみ方……」
「うん? 小説ですか?」
「ガーデニングの本です。私の兄は土魔法の属性で、私より上手に何でも育ててしまうの……。負けたくなくて……」
「ふふっ! リディア様は勤勉なんですね! では、お好きな色は?」
「薄青……」
「ほおー誰かの瞳の色ですね!」
ドキッとした。その通り、クリス様の瞳の色。好きな色と言われて思いつくのは、どうしても、クリス様の色だ。
「お好きな男性は?」
「えぇ!?」
「流石にそれは婚約者であるクリストファー殿下ですよね。わかりますわかります」
うんうんと頷きながら、何やらメモを取るステラ。一体何がしたいのか。突然どういうつもりなのか。心配しなくても、私はステラをいじめるつもりはないのに……。
「あ、あの? こんなことを聞いて、何の参考になるのかしら?」
「うーん……秘密です」
あ、可愛い。「秘密」と言って誤魔化すの可愛い。
「今日はこのくらいで! ありがとうございました! リディア様また明日ー!」
「あ、ペンを落としたわよ」
私の声は届かなかったのか、ステラはそのまま去っていく。私はペンを拾って追いかけた。そして彼女の肩をたたこうとした、その瞬間。
「ゲームの世界と何でこんなに違うんだろ」
「!?」
ステラの呟きに私は言葉を失った。
翌日。まずはステラと仲直りをして、アラン様との恋路をもっと応援しなくてはと心に決めた。
そして放課後、私はステラを探すことにしたのだが、どこにも見当たらない。校舎にも中庭にも、ステラが住んでいる学生寮にも帰っていなかった。
(どこにいるのかしら)
「ふふっ」
遠くで可愛らしい声がした。何やら楽しそうに笑っている声だ。あの声はもしかしたらステラのものでは?
声が聞こえた校舎裏の方を覗くと、驚くべき光景を目の当たりにしてしまった。
「よろしく頼む」
「はーい」
(クリス様とステラ!?)
信じられないことに、二人きりでいた。その上、クリス様が他の女の子にあんなふうに笑いかけるだなんて!
衝撃でその場を動けない。だが、話がちょうど終わったのか、クリス様がこちらにやってくる。
私は急いでその場を離れた。
「はぁっ! はぁ!」
全速力で走ったので息が切れる。胸が、苦しい。
ついに、この時が、来てしまった。
「っ!」
頬を伝う涙は、急いで拭う。ヤキモチなんて妬いちゃダメ。嫌がらせをしてしまったら、私は死んでしまう。生き残ることができたら、また何か違う世界が広がるはずだ。クリス様が全てじゃない。だから泣いちゃ、妬いちゃだめだ。
「……ふっ……うぅっ……」
誰もいない校舎で一人、涙がポタポタとスカートを濡らした。
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「リディア様っ」
「!?」
クリス様と二人で裏庭にいたのを目撃した翌日、何もなかったかのようにステラが話しかけてきた。
「私、リディア様とお友達になったんですよね?」
「え、ええ……そうね」
銀の髪はゲームのスチル通り、片方だけ三つ編みにしていて、その小さな顔が際立っている。可愛い。こんな可愛い子が自分に好意を持ってくれたら、そりゃ婚約者がいたってクラっとしてしまうだろう。
今更だがステラと友達になったことで、クリス様との仲を相談されたりしたらどうしようと不安になった。
「ちょっと色々教えてもらえます?」
メモ帳とペンを携えたステラが、意気揚々とインタビューしたいと言うのだ。
何がしたいのだろう。敵前調査かしら。
「えーっと、まずは、お好きな食べ物は?」
「え、ええと、甘いもの……かしら」
「お好きな飲み物は?」
「イルランド産の紅茶ね。こんなことを聞いてどうするの?」
「イルランド産、と。まぁまぁ、良いじゃないですか! お好きな本は?」
「……花と暮らす楽しみ方……」
「うん? 小説ですか?」
「ガーデニングの本です。私の兄は土魔法の属性で、私より上手に何でも育ててしまうの……。負けたくなくて……」
「ふふっ! リディア様は勤勉なんですね! では、お好きな色は?」
「薄青……」
「ほおー誰かの瞳の色ですね!」
ドキッとした。その通り、クリス様の瞳の色。好きな色と言われて思いつくのは、どうしても、クリス様の色だ。
「お好きな男性は?」
「えぇ!?」
「流石にそれは婚約者であるクリストファー殿下ですよね。わかりますわかります」
うんうんと頷きながら、何やらメモを取るステラ。一体何がしたいのか。突然どういうつもりなのか。心配しなくても、私はステラをいじめるつもりはないのに……。
「あ、あの? こんなことを聞いて、何の参考になるのかしら?」
「うーん……秘密です」
あ、可愛い。「秘密」と言って誤魔化すの可愛い。
「今日はこのくらいで! ありがとうございました! リディア様また明日ー!」
「あ、ペンを落としたわよ」
私の声は届かなかったのか、ステラはそのまま去っていく。私はペンを拾って追いかけた。そして彼女の肩をたたこうとした、その瞬間。
「ゲームの世界と何でこんなに違うんだろ」
「!?」
ステラの呟きに私は言葉を失った。