悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
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「お父様! わたくし、夢を見ましたの!」

 帰りの馬車の中で私は作戦を立てた。
 私ひとりの力では、この国が壊滅状態になるのは避けられない。しかし、エンディングの神スチルを見るためには、魔王による侵攻から国を守り、私も生き残らなければならない!

 よって、父の権力と金とコネを使うことにしたのだ! 父は聖騎士団の団長。つまり魔族や魔王と戦う最前線。その上、我が国筆頭のメイドランド公爵だ。政治力も軍事力も抜群! なんとか国王とか偉い人を動かして対策してください!

 そういうことで、私は公爵家に帰宅した途端、父に夢を見たと主張したというわけだ。

「リディ。お前が茶会で倒れたと聞いて、私は大層心配したのだが……。帰るなり勇ましく夢の話をするとは……せめてもっと令嬢らしく……」

 公爵邸のエントランスで出迎えてくれた両親に勢いよく主張したせいで、父は呆れている。このままではいつものお説教が始まってしまう。

「魔王が!! 魔王が復活するのです……!!」
「!?」
「リディ!?」
「まぁっ」

 『魔王』というショッキングなワードに、両親も兄も息を飲んだ。私は順序立てて説明をする。

「お茶会で王子様にご挨拶した瞬間、女神様の声を聞きました。『魔王が復活するのだ』と。『五年後に起こる』のだと」

 ゲームだ前世だと言っても信じてもらえないだろうし、説明するのも難しいので、そういうことにしてみた。この世界では創世の女神ティアマ様を信仰しており、この国の始まりはその女神の子孫が繁栄したものだという言い伝えがある。
 そして神官様や数百年に一度現れるという聖女は、その声を聴くことが出来るのだ。

 私は声を聞いた訳ではないので、完全なる大嘘である。

 母は動揺を隠せないようだが、父は心当たりがあるのか、あまり驚かない。

「私はあまりのショックに気を失いました。その時に、この国が実際に魔王に襲われて、壊滅する夢を見たのです……!!」
「……それで?」

 父は、私の話を否定もしないが肯定もしない。私の言葉が信用出来るのか吟味しているのだろう。試すような鋭い視線に萎縮してしまいそうになりながら、プレゼンを続けた。

「……ゆ、夢の中で、私は死にました……。国王様もお父様も沢山……。とっても、とっても怖い夢でしたっ! ……だから……」

(ここから。私は、私の、運命を変える!)
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