悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
*
「あぁ、気がついたかい? よかった。心配したよ。リディア嬢」
目を開けると自室のベットで横になっていた。もう陽が高く、昨夜魔力を枯渇して倒れてから、随分眠ってしまったようだ。
恐らくもう朝は過ぎ昼近くだろうが、枯渇したはずの魔力は一晩で随分回復していた。
そして。
前回王宮で倒れた時と同様に、ベッド脇の椅子に堂々と腰をかけて微笑むこのお方。
「あの、何故ここに、クリストファー殿下がいらっしゃるのでしょう?」
「その後の体調が心配で、見舞いに来たんだ。そしたら昨夜また君が倒れたと聞いたから」
にっこり悪びれもせず、クリストファー殿下が言った。
ドアが開いているとはいえ、またもや寝室に二人きり! しかも絶対寝顔ガッツリ見ましたよね!?
(いやいや! 乙女の寝室に何度も単独で入室しちゃ駄目でしょ! プライベート侵害! この屋敷の皆もなんで通しちゃったの!?)
どうせ、『リディアを未来の王子妃に!』と張り切っているお母様あたりが、あっさり許可して通してしまったのだろう。でも、ここ王宮じゃないですし! 護衛の方とか側近の人とかも一緒にいてほしいし、うちのメイドも誰一人控えてないってどういう状況!? しかしここいるのは殿下だけ。不満をぶつけていい相手ではない。寝起きだが、精一杯の猫を被ることにした。
「ご、ご心配をお掛けして、申し訳ありません」
「君は身体が弱い訳ではないと聞いていたのだが……。必要なら宮廷医を寄越すから一度診てもらうといいよ」
「い、いえいえ! 前回も今回も、心当たりがありますの! 重大な病ではありませんからお気になさらず! おほほほ……」
「そう? それならいいけど」
殿下に「貴方の顔を見たら前世のゲームを思い出した!」と言っても信じて貰えないだろうし、「女神の声を聞きました!」なんて言ったら聖女気取りの虚言癖だと思われそうだ。さらには公爵令嬢が剣術と魔力量アップの稽古をしているのを堂々と吹聴するのは気が引けて、ここはちょっと誤魔化してみることにした。
「そ、それよりも、花束をありがとうございました! 赤い薔薇が好きなのでとても嬉しかったですわ」
「喜んでもらえてよかったよ。女性に花を贈るのは初めてだったから、どんな花にするか迷ったんだ……。でも薔薇ならば君のその綺麗な赤い髪によく映えると思って」
(〜〜〜ッ!!!???)
ものすごいイケメンがはにかんでいる!! 何その顔! 可愛い! こんな神スチル知らない! どうしてスクショ機能がないの!?
「あ、あ、ありがとう、ございます」
「また、贈ってもいいだろうか?」
「は、はい……」
「ありがとう」
か、可愛い。少年の殿下可愛い。イケメンだけどまだ少し幼い彼の、ちょっと恥ずかしい表情! なんてレアなの!? 殿下の婚約者にはなっちゃダメなのに、こんな可愛く聞かれたら頷くしかないでしょ! これがシナリオの強制力!?
そして本当に殿下は、その後も定期的に薔薇の花を贈ってくださった。
猫を被った私をどうやら気に入ってくださっているらしい。本当の私は剣を振るい、筋トレをして、攻撃魔法を絶賛練習中のお転婆令嬢だ。きっと本当の私を知ったら、あっさり心変わりするんだろうな。
メインキャラの王子様は、案外ちょろいのかもしれない。
「あぁ、気がついたかい? よかった。心配したよ。リディア嬢」
目を開けると自室のベットで横になっていた。もう陽が高く、昨夜魔力を枯渇して倒れてから、随分眠ってしまったようだ。
恐らくもう朝は過ぎ昼近くだろうが、枯渇したはずの魔力は一晩で随分回復していた。
そして。
前回王宮で倒れた時と同様に、ベッド脇の椅子に堂々と腰をかけて微笑むこのお方。
「あの、何故ここに、クリストファー殿下がいらっしゃるのでしょう?」
「その後の体調が心配で、見舞いに来たんだ。そしたら昨夜また君が倒れたと聞いたから」
にっこり悪びれもせず、クリストファー殿下が言った。
ドアが開いているとはいえ、またもや寝室に二人きり! しかも絶対寝顔ガッツリ見ましたよね!?
(いやいや! 乙女の寝室に何度も単独で入室しちゃ駄目でしょ! プライベート侵害! この屋敷の皆もなんで通しちゃったの!?)
どうせ、『リディアを未来の王子妃に!』と張り切っているお母様あたりが、あっさり許可して通してしまったのだろう。でも、ここ王宮じゃないですし! 護衛の方とか側近の人とかも一緒にいてほしいし、うちのメイドも誰一人控えてないってどういう状況!? しかしここいるのは殿下だけ。不満をぶつけていい相手ではない。寝起きだが、精一杯の猫を被ることにした。
「ご、ご心配をお掛けして、申し訳ありません」
「君は身体が弱い訳ではないと聞いていたのだが……。必要なら宮廷医を寄越すから一度診てもらうといいよ」
「い、いえいえ! 前回も今回も、心当たりがありますの! 重大な病ではありませんからお気になさらず! おほほほ……」
「そう? それならいいけど」
殿下に「貴方の顔を見たら前世のゲームを思い出した!」と言っても信じて貰えないだろうし、「女神の声を聞きました!」なんて言ったら聖女気取りの虚言癖だと思われそうだ。さらには公爵令嬢が剣術と魔力量アップの稽古をしているのを堂々と吹聴するのは気が引けて、ここはちょっと誤魔化してみることにした。
「そ、それよりも、花束をありがとうございました! 赤い薔薇が好きなのでとても嬉しかったですわ」
「喜んでもらえてよかったよ。女性に花を贈るのは初めてだったから、どんな花にするか迷ったんだ……。でも薔薇ならば君のその綺麗な赤い髪によく映えると思って」
(〜〜〜ッ!!!???)
ものすごいイケメンがはにかんでいる!! 何その顔! 可愛い! こんな神スチル知らない! どうしてスクショ機能がないの!?
「あ、あ、ありがとう、ございます」
「また、贈ってもいいだろうか?」
「は、はい……」
「ありがとう」
か、可愛い。少年の殿下可愛い。イケメンだけどまだ少し幼い彼の、ちょっと恥ずかしい表情! なんてレアなの!? 殿下の婚約者にはなっちゃダメなのに、こんな可愛く聞かれたら頷くしかないでしょ! これがシナリオの強制力!?
そして本当に殿下は、その後も定期的に薔薇の花を贈ってくださった。
猫を被った私をどうやら気に入ってくださっているらしい。本当の私は剣を振るい、筋トレをして、攻撃魔法を絶賛練習中のお転婆令嬢だ。きっと本当の私を知ったら、あっさり心変わりするんだろうな。
メインキャラの王子様は、案外ちょろいのかもしれない。