敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 ディーノに優しく促され、椅子に腰かけて前髪を上げたら、痛ましげに眉根を寄せられた。覗き込んだ他の精霊たちもその目に憐憫と憤りを滲ませた。
《……あぁ、これは痛かったでしょう。沁みたらおっしゃってくださいね》
 私がコクンと頷くと、さっそくディーノが傷口に清涼な水を当て、丁寧にすすぎだす。
《ディーノの言う通り、エミリアの側は比類なく居心地がいいんだ。断られたって側にいるさ》
 サラマンダーは額からこぼれ落ちる水滴を器用に蒸発させながら頷く。床を濡らさぬ配慮だとわかるのだが、桶で受けるのではいけないのか。
 これまで何度訴えても《気にするな》のひと言で一蹴されてきたので今さら口にはしないけど、彼らは日頃から私のために精霊の力を無駄遣いしすぎだと思うのだ。
《うんうんっ。僕もずっとエミリアと一緒にいる》
 綺麗に洗った傷口をそよ風で優しく乾かしながら、シルフが満面の笑みで告げる。
《同感じゃな。よし、これでいいじゃろう》
 ノーム爺が最後に殺菌消毒に優れた白い粘土で傷口を保護してくれた。
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