敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 だが、それも道理だ。こんなにも愛おしいと思える存在に出会い、舞い上がらないでいられる方がおかしい。
 湧き上がる恋情の前には、未来の国王となる俺とて所詮ひとりの男。愛しい人の愛を得るため、真心を尽くすのみだ。
 僅かにでも気を緩めればすぐに綻びそうになる口もとを意識して引きしめる。彼女の前で浮かれすぎ、醜態を晒すわけにはいかない。
 姫は俺に手を引かれて車外に出て、トンッと地面に足をついた。
 身長二メートルの俺より頭ふたつ分低い華奢な体。太陽の下でアメジストより澄んだ紫の瞳を輝かせ、キラキラと光を弾くプラチナブロンドを揺らした彼女は、まるで妖精のよう。
「よく参られた。到着を心待ちにしていた」
 妖精を逃がさぬよう、取った手を離さないまま、努めて丁寧に語り掛ける。
「アドランス王国の王女エミリアでございます。お出迎えありがとうございます」
 姫はその目に僅かな戸惑いを滲ませながら、膝を折って答えた。
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