敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 ハウイットは俺を見やり、眩しい物を前にしたみたいにスッと目を細くした。
 それからしばらく俺たちは黙々と山を登った。
「ところで、この場にエミリア様をお連れしなくてよかったのですか? 建国の神々の祝福を受けたとされる『聖女』なのです。彼女にもなにがしかの役目があったのでは?」
 祠まで間もなくというところでハウイットから尋ねられ、俺は返事に窮した。
 聖女が災厄にどう関わったかと問われると、俺にも実際のところがわからないのだ。聖女についての記述は【モーリスは精霊神のいとし子と共に無事に災厄を跳ね退けた】と、この一文のみ。モーリスが矢を放ち、火球に対処する様が詳細に記されているのに対し、いとし子の行動についてはあまりに曖昧である。『共に』とは、いとし子も力を使いモーリスを援助したのか。あるいは、ただ単に一緒にいたということなのか。
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