23時の王子様とのホワイトデー
「あと買うものなかったかな……あ!アレ!美弥来い。あ!走んなよ、歩けよ!」

颯は、人差し指で今から行くコーナーを指差してから、カートを押し、空いた掌で私の手を引いた。

颯は、私の妊娠が分かってから、歩くときは必ず手を引いてくれる。プライベートの時は、嬉しいのだが、私達の婚約が会社でも公になってからは、颯は、会社でも私の手を常に引いている。

(颯って……私に意外とベッタリ?)

最近は、私の隣にデスクを追加して、副社長の仕事を企画営業第一課の事務所でする始末で、さすがの千歳も呆れていた。

「お、結構種類あんのな、メーカーだけでも8社か」

颯が、早速1番手前のベビーカーを広げてみている。

「なぁ、美弥、子供ら、縦に上下に乗せるのと、横に並んで乗せるのとどっちがいい?」

颯は、ベビーカーの展示用に置いてあった赤ちゃんの人形を持ってくると、大事そうにそっと、乗せた。

「マジちっちぇな……俺、抱っことかできんのかな」

颯が、パパになるなんて、何だか信じられない。どんなパパになるんだろう。

でもきっと、何だかんだといいながらも私と同じように愛を注いで、生涯大切にしてくれるのだろう。
< 4 / 9 >

この作品をシェア

pagetop