23時の王子様とのホワイトデー
「美弥?」

「ううん、なんでもない。えと、両方の顔が見えやすいから、横に並んで乗せてあげたいかな」

颯が、にんまり笑った。

「俺もそう思った、じゃあ、これも配達してもらお」

颯は、品番が、記載された値札横の白いカードの写メを撮る。

「それにしても、新生児ってこれより小さいんだよな……抱っこってこうか?」

颯が、赤ちゃんの人形をベビーカーから持ち上げると、グッと胸に押しつけた。

「わっ、ダメだよ、息止まっちゃうよ」

「え!マジか!」

「私もまだ産婦人科の待合室でビデオとかでしか見たことないけど、こうかな?」

颯からそっと、赤ちゃんの人形を受け取ると、頭を腕で支えて、もう片方の腕で赤ちゃんのお尻を支えた。颯が、感嘆の声を上げた。

「すげぇ……お母さんじゃん」

「それいうなら、颯もお父さんでしょ?」

「まぁ……」

「可愛いね、楽しみだなぁ。いっぱい抱っこして、いっぱい大好きって言ってあげるの」

颯は、私の赤ちゃんを抱っこする姿を眺めながら、ほんの少しまた、口を尖らせている。
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