逃すもんか
翌日は、定時で仕事を終えた。
約束の時間まで北野さんと2人で、
ウチの社員たちが来ないような昔ながらの喫茶店へきた。

カラン♪
「いらっしゃいませ。空いているお席へどうぞ」
と渋い感じの年配のマスター。

窓からも見られないように奥のテーブル席に座って、ブレンドコーヒーを注文した。

「北野さん、その後どうですか?」

「うん。とにかく両家の父親が張り切ってて、ドンドン話しを進めてね〜。
来月、お仲人さん無しで結納する事になったわ。ハハ。」

「え、4月の下旬に飲み会で…
5月の頭に観光牧場。
6月にラグビー観戦…
7月に結納!
北野さん、本当に大丈夫ですか?
平岡さんとデートだってそんなに行ってないですよね…」

「うん、デートはまだ行ってない。
でも毎晩2時間は電話してるかなぁ〜
大崎さんが言ってた宇宙人的な時もあるけど、基本は本当に思いやりがあって優しいのよ。」

「良かった〜。
大昔の人は顔も見ないで嫁ぐ花嫁さんもいたけど、北野さんも平岡さんとコミュニケーションないまま結婚式の話しが進んだらと心配だったんです。」

「ふふふ。大丈夫。いろいろと2人の意見も擦り合わせしてるんだ。
私は平岡さんは長男だし、同居でも良かったんだけど2、3年はマンションになると思う。
平岡さんのお家からだと通勤時間がかかるから、もう少し会社に近くて平岡さんとウチの実家へも行き来しやすい場所にしようか?って相談してるの」
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