逃すもんか

その夜の史弥さんは優しく私を抱いた。
私は涙が出るのを我慢して史弥さんが眠ってから気づかれないように声を殺して泣いた。

出発の朝、軽く朝食を食べて駅の改札で別れた。

「じゃあ、ゆかり。行ってきます」

「うん。頑張ってね。成功するように祈ってるからね。」

「うん。ありがとう! ゆかりも気をつけて帰るんだぞ。」

「うん。じゃあね。」

「うん。また電話するな。じゃあ」
と言って史弥さんは反対のホームへ向った。
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