逃すもんか

先生は作業台に完成図のデッサンを広げ、
フランス語の製作指示書。
指定の皮や金具。
糸などを置いてくれていた。

「大崎くん。今回の課題製作指示書です。
フランス語大丈夫だよね?」

「はい。」

「じゃあこの課題製作の指示書に沿って作ってもらうんだけど、まずはお茶でも1杯飲んでからにしないか?」

「え、あ、はい。」
先生はコーヒーを淹れてくれた。
その間にオレは指示書に目を通した。
特に注意しなければいけない箇所が何ヶ所かあるなぁ…と思った。

「どう? 5日で足りると思うけど…」

「はい。大丈夫です。」

「私は助言はできなくて、大崎くんの製作工程を見てるだけになるからね」

「ハイ」

「フランス語を頑張ってたって、田村くんからも聞いてたからこの指示書もすんなり読めると思ったよ。
田村くんの専門学校の生徒の中にも、2人くらいフランスのブランド職人になりたいって子がいたんだけどね、フランス語がダメで諦めたんだ。

田村くんだけはフランス語も技術も努力してたから、推薦できたんだけどね。
さあ、じゃあ始めようか?」

「ハイ。」
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