逃すもんか
息子さんも結婚して、孫たちが遊びに来てくれるのが今の1番の楽しみと言って、先生と奥様はニコニコしていた。

リビングにも家族写真がたくさん飾られていて、
工房の職人さん達との写真もたくさんあった。

先生は、その中の1人を指差して
「このリュカは僕の後輩でね。今回いい職人を紹介して欲しいって言ってきたんだ。」

オレもその写真に近づいて良く見てみた。

先生は40代くらい?でそのリュカさんは10代か20代に見えた。

「リュカは私より20歳も年下なんだけど、何故か私に懐いてくれた子だったんだ。
なぜ、東洋人の私に仕事を質問するのか尋ねたらね、他のフランス人の先輩達は自分の技術を盗まれたく無くて教えてくれない。
だから仕事をしながら先輩達の仕事ぶりを見るけど、やっぱりわからないところがある。

そして、質問してきちんと教えてくれるのが私だけだと言ったんだよ。
東洋人とかフランス人とか関係なく人間として私を尊敬すると言ってくれた唯一の後輩でもあるんだ。」
と先生は懐かしそうな表情で微笑みながら写真を見つめていた。
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