逃すもんか

工房


入籍後の6月末
8月で退職したいと上司に話しをした。
「やっぱり、大崎も田村と同じだったかぁ〜
仕事熱心でストイックに技術を磨いてたしな。
お前の夢が叶ったんだな。
会社としては、残念だけどさ。
おめでとう。向こうへ行ったら世界が相手だな」

「はい。ココで修行しながら仕事を覚えた事は私の宝です。これからも精進します。」

「で、8月まで出社してあとは有給消化でいいのか?」

「はい。
それから…オンライン販売部の中島さんと入籍しました。
2人で向こうへ行きます。」

「え、そうなの?重ねておめでとう。
じゃあ、結婚式や披露宴は出来ないのかな」

「はい、すみません。」

「ま、フランスで2人だけのウェディングもロマンチックだしな!
結婚式の写真くらい送ってくれよ。
みんなも喜ぶしさ。」

「はい。必ず写真を送ります」

「はい。じゃあ総務と人事に話しを通すな」

「はい。宜しくお願いします。」

「工房のみんなには、明日の朝礼で大崎から挨拶してくれ。」

「はい。
師匠、本当に私を職人として育てて下さってありがとうございました。」と史弥は深々とお辞儀をした。

「やめろよ〜。泣いちゃうジャン!
とにかく、日本人のサムライ魂で頑張れ。」
と上司はさっさと事務所から出てトイレへ向かった。

【サムライ魂】かぁ…
本当に何もわからないオレをここまで育てていただいた会社には感謝しかない。
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