逃すもんか
翌日の朝礼で、
上司からオレが8月いいっぱいで退社する通達がされ、オレから挨拶するように言われた。

「みなさん。まだ2ヶ月ありますが8月いっぱいで退社する事になりました。
古い方々は知っていると思いますが、以前こちらで働いていた田村先輩と同じフランスの会社で10月から働くことになりました。
何もわからなかったオレを育てていただいたみなさんには本当に心から感謝しております。
ありがとうございました。
これから職人としてフランスで頑張ります。
最後まで一生懸命働きますのでヨロシクお願いします」

「え〜フランス〜!」
「田村先輩って…あの超一流ブランドへ転職したって人?って事は…大崎先輩もあのブランドの職人になるの?」
「大崎先輩、フランス語話せるの?」
「ケチケチしてたのは金貯めてたのか?」とオレの悪口を言っていた若手がヒソヒソと話しをしていた。

「オイ!そこの若手たち!
大崎はな〜入社してすぐに語学も仕事もそしてフランスへ行く費用もずぅーと努力してきたんだ。
ひたすらに世界を目指して頑張ったんだよ。お前らも頑張れ」
っとベテランの職人さんが若手に声を掛けた。

「大崎がいなくなって寂しくなるけど、みんなで送り出してやろう。
大崎、あと2ヶ月間はこの工房で頑張って、フランスで今以上の腕を磨いて世界に通じる職人になれ!みんな拍手!」
パチパチパチパチ。
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