逃すもんか

その時、片桐先生からオレのフランス語の事や、
今の工房でどんな仕事を主にやってるのかなどの質問があった。

そしてその時
『来年、1週間でバッグを作りに来なさい』とオレに言った。
田村先輩はニコニコしていた。

******

片桐先生にお会いしてもうすぐ1年なので先生に連絡すると、
「やぁ、大崎くん。
僕との約束を忘れないでくれて嬉しいよ。」

「先生にオレの実力をみていただけるチャンスなので忘れる筈がありません。
あの休みの申請などがありまして…
いつからそちらへ伺えばよろしいでしょうか。」

「大崎くん。
本当に約束してたのに申し訳ないのだが…
私は手術する事になってしまったんだ。」

「え、お体大丈夫なんですか?」

「ハハ。もう年寄りだからさ〜」

「あの…どこが悪いんですか?」

「大腸にポリープが見つかって、
ガンかと思ったら良性だったから
それを取る手術をするんだよ。
本当に申し訳ないんだが、来年の秋でもいいかなぁ」

「ハイ。私は先生の都合に合わせますので、
大丈夫です。」

「うん。本当に悪かったなぁ。
私もフランスの職人仲間にも声をかけているんだが、なかなか職人の採用が無くてねぇ。
大崎くん、本当にゴメンな。」

「いえ、来年までもっと努力して仕事します。」

「ああ。楽しみだなぁ。じゃあまた連絡もらえる?」

「はい。また来年の夏に連絡致します。
手術成功して元気になるのをお祈りしてます。
では、失礼します。」ピッ!
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