逃すもんか
「あのね、柊一も5歳からちびっ子ラグビー教室でラグビーをしていたのよ。
その頃はお父さん達も、子ども達に教えてたし…

でも柊一が小学3年生の時、誠二も5歳になったから2人共ラグビー教室へ通うようになってから、
突然柊一は吃音になってしまったの…
どもりが酷くて、学校でもからかわれてねぇ…
そして喋らなくなっちゃって。

私たち夫婦も原因がわからないし、
柊一は段々元気もなくなって、学校も行きたくないって毎朝泣くし…

学校の先生から小児医療センターへ連れて行ったらどうかと言われてね。

小学3年生だし、センターの先生から作文を書くように言われた柊一が書いた内容は……

『ぼくは、ラグビーが好きだけど、やるのは怖いです。
お友達とぶつかると痛いから。
弟もラグビーを始めたけど、ぼくより弟の方が上手だとお父さんもお母さんも喜んでいます。
ぼくもせいじのほうが、うまいと思います。

ぼくは、イルカみたいに泳ぎたいから、ラグビーよりスイミング教室へ行ってプールでたくさん泳ぎたいです。』

そんな内容で、お父さんも私もポロポロ泣いてね〜

お父さんが柊一に『柊一はイルカみたいに泳ぎたいのかな?』って聞いたら。

『ゴメンなさいお父さん。
ぼくはラグビーより水泳をしたいんだ……』って言ったの。

きっと、ラグビーを辞めたら私たちに悪いと遠慮して水泳したいのを我慢してたのよね。

ラグビー教室を辞めて、スイミングに通ってしばらくしたら、吃音は治ったの。
だから、これからも柊一のことを宜しくお願いします。」
と平岡ママは2人に頭を下げた。

「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします。」
「はい。私も宜しくお願いします。」
2人は少し涙ぐんでいた。

そして、大量のお稲荷さんを3人で作り上げ庭へ運んだ。
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