逃すもんか
新入社員のオレたち。

平岡さんは先輩とデパートの直営店へ営業に回っているらしい。

その先輩からいろいろと仕事を教えてもらっている。
でも平岡さんは、仕事用の商品カタログを自宅に持ち帰って、それぞれの商品をじっくり勉強して努力していた。
時々、オレに質問される事があるが…

「平岡さん、オレは商品の特徴を説明できないので、田村先輩や大ベテランの職人さんたちに質問しておきますね。
すみません。」

「いや、コッチこそ早く一人前になりたくて〜ハハ。
焦り過ぎだったな。ゴメン」

「でも、すごい仕事熱心ですよね」

「う…ん〜 そうかなぁ… 負けず嫌いなんだよね。
俺の長所であり短所でもあるんだけど…」

「短所ですか? 向上心があるって事でしょう?」

「まぁそうなんだけど…
でも俺〜 何でも知りたい!っと思うと突っ走っちゃって、俺の質問に答えられない先輩のプライドをへし折っちゃたり、1人で空回りしちゃうんだよね〜」

「そうなんですかぁ。でも…上手く先輩やベテランの販売員さんから教えてもらえば、良いと思うし…

ウチの爺ちゃんはいつもオレにニコニコしろ!
って言ってて、
笑顔で謙虚でいつも感謝してる人は、みんなに可愛がられるヤツになるし、人が寄ってくるんだ。
って言ってました。」

「笑顔、謙虚、感謝かぁ。
大崎くんのお爺さんはとても良い事を君に教えてくれたんだね。
ありがとう。元気出たよ」

史弥も笑顔で頷いた。
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