放課後の眠り姫
「ねえ、どうして僕の方を見てくれないの?」

不意に低い声で言われ、珊瑚の肩が震える。嫌でも昨日のことを思い出してしまい、恥ずかしさを感じながらもゆっくりと莉生の方を見た。相変わらず、莉生は可愛らしい顔をしている。だが、その目はギラギラとしていた。

「隙あり」

胸元を優しく掴まれた刹那、唇が昨日と同じように重なる。だが、今日は昨日よりも反応することができた。互いの唇が触れてすぐ、珊瑚は莉生の肩を押し、距離を取る。それだけで心臓がバクバクとうるさい。

「い、いきなり何すんだ!」

怒りと驚きが珊瑚の放った声には混じっている。だが、莉生は気にする様子もなく笑っていた。

「珊瑚ちゃんが可愛いから、会うたびにキスしたくなるの!」

「はあ?」

莉生の発言は、もはや付き合ってる彼氏が言うものだろう。だが、決して珊瑚は莉生と付き合ってもいないし、好きになったわけでもない。

「……可愛くなんてないから」
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