放課後の眠り姫
ずっと今まで「可愛いものは似合わない」と言われてきたため、初めて言われるその言葉がどこかむず痒い。

「あ、ありがとう……」

ピンクなど、自分には一生縁のない色だと珊瑚は思っていた。そのピンクのドレスを着て珊瑚は今、体育館のステージ裏に立っている。

「えっ、あれ四季?」

「綺麗……!」

ヒソヒソとクラスメートたちに言われ、珊瑚は恥ずかしさを覚えていく。その時、女子たちから黄色い悲鳴が上がった。

「かっこいい、莉生くん!」

珊瑚が振り返れば、そこには王子様の豪華な衣装を着た莉生が歩いてきた。マントがバサリと音を立て、豪華に見える金色の刺繍が美しい。そして、その衣装を着た莉生はいつもの「可愛い男の子」とは思えないほどだった。

「かっこいい……」

珊瑚の口から自然と言葉が漏れる。それを聞いた莉生の頰が赤く染まった。そして、莉生の顔がそっと近付いてくる。

「珊瑚ちゃんもすごく綺麗だよ」
< 16 / 21 >

この作品をシェア

pagetop