放課後の眠り姫
今回も、演劇部の舞台発表でする「不思議の国のアリス」ではマッドハッターを、クラスの出し物の「眠り姫」では王子役を演じる。衣装を着た時にみんなから言われたのは、もう何度言われたのかわからない台詞だ。

「珊瑚ちゃん、男の子に生まれたらよかったのに〜!」

珊瑚と真逆なのが莉生だ。

莉生は、身長百六十センチと学年の男子の中で一番背が低い。そして、色白でパッチリとした二重、ふわふわの癖っ毛のおかげで、まるでアイドルのように可愛らしい。珊瑚とは真逆で、スイーツや可愛いものがよく似合う。そのため、性別は男の子なのだが、お姫様役に選ばれたのだ。

「莉生くん、女の子に生まれたらよかったのに〜!」

二年生の女子たち、そして他学年でもこう莉生は言われている。それほど二人は有名なのだ。



「……じゃあ、始めるか」

チラリと時計を見て、珊瑚は呟く。二人は今日の放課後、クラスの出し物でする劇の練習をしようと前から話していた。眠り姫は、王子様とお姫様が一緒に登場するシーンは少ないものの、莉生が「どうしても二人でしたい!」と言ったため、空き教室ですることにしたのだ。
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