放課後の眠り姫

「練習する前に、一つ聞いていい？」

莉生がそう言い、珊瑚は劇のことで何かわからないことがあるのだろうかと思い、頷く。

「演劇部の人から聞いたんだけど、珊瑚ちゃんって他の人の台詞も完璧に覚えてるって本当？」

真剣な顔でそう言われ、珊瑚は何故今そんな質問をするんだと疑問に思いつつ、口を開いた。

「ああ、覚えるようにしてる。そうしないと、自分の台詞をいつ言うのかわからなくなるからな」

「自分が登場しないシーンの台詞も覚えたりするの？」

「ああ、覚えるようにしてる」

珊瑚がそう答えると、莉生はホッとしたような表情を見せた。そして、再び口を開く。

「あのさ、明日の本番変わってくれない？王子役とお姫様役」

「……は？」

突然言われたことに珊瑚は固まる。もう衣装もお互い採寸され、衣装係に選ばれたクラスメートが珊瑚と莉生の体に合わせて衣装は作られている。今さらそんなことを言われても無理な話だろう。