霊感御曹司と結婚する方法
「実は僕もエムテイの関係者でさ……。社員ではないんだけど」
彼の家は小規模ながら代々、機械メーカーの事業を営んでいるらしい。
「父のコネで、エムテイの海外事業部に出向させてもらって、ずいぶん遊ばせてもらった。恥ずかしい話だけど。
僕は子供の頃からの夢があって、航空機のパイロットになりたかった。その夢は叶えられなかったけど、何とかそれに近いところで仕事がしたいとずっと考えていたんだ。エムテイの海外事業部のなかに航空機販売部門があって、それの一部を引き継いで国内で事業を立てることになったんだ。
ヘリコプターやセスナとかの小型航空機の売買を手掛ける事業だ。それだけじゃ無くて運行も手掛けていくように準備をしている。
僕が代表で、もう一人役員として僕の友人がいる。そいつは中学高校の同級生で、エムテイの出身者だ。僕よりもよほど優秀で有能だし、落ち着いている。真面目で、多少頭が固いところがあって融通がききにくいんだが、その分周りからの信頼は厚い。
メンバーは、僕が声をかけたのは、語学が堪能な貿易事務の外国籍の女性たちと、コンピュータの専門家と……。あと、君と。少人数だが、これくらいで回していく」
その話を聞いて私には驚きしかない。この店につれてこられた以上の萎縮を感じる。
「……私は、関係ないですよね。無理です。そんなの聞いたら、余計に……。私は、蚊帳の外です。私以外は、みなさん優秀で、みんなお知り合い同士で。どうして、私がそこにいられると思いますか? 不自然ですよね?」
メンバーがエムテイの人だったら、今は自分のことを知らなくても、いつか、私の悪い噂は耳に入るかもしれない。それは、他人にとっては何とも思わないことかもしれない。だけど、私が意識していつまでも立ち直れない。
「ちょっと待て、当分は新しい事務所にいるのは、僕と友人の二人だけだ。そこに君を迎えようと……」
焦った私には、彼の言うことは聞こえていなかった。
「今だって、このお食事だって、どうしてこんなことしてくれるんですか? 怪しいですよ。おかしいですよ。赤の他人にそこまでする理由ってありますか?」
私は、そこまで言うと、目の前に雑に並べられた、たくさんの現金の束が見えた。それは、私にとって思い出したくもない光景だ。
(そう。私は赤の他人なのに、どうして向井さんはあんな大金を……)
「どうしてって、そうだな。ちゃんと理由はある。でも、今は言えない」
「何ですか、それ……」
その時、自分の記憶に反応して、急に身体がおかしくなった。冷や汗がだらだらと出て、心臓も壊れるんじゃないかと思うくらい激しく脈動して、呼吸のし方を忘れたんじゃないかと思うくらい息苦しくなった。
(何これ……?)
私は自分の胸ぐらを掴んでどうにか呼吸を確保しようとした。
「どうした?」
村岡さんが慌てて、店員を呼んでいた。
「大丈夫です……」
だめだ、全く声にならない。
これは、過呼吸症候群と言われるものだと思った。しかし、経験するのは初めてだ。私は一刻も早くこの場を去りたい衝動で、立ち上がろうとした瞬間、めまいがして目の前が真っ暗になった。遠くで何かが割れるような音を聞いた。
過呼吸症候群で意識消失なんてフツー聞かないですよね? ずっと食べていないし、眠れていないせいだと思います。私は、自分の健康管理すらまともにできないダメな社会人なんです。これでわかりましたよね? この話はなかったことにしてもらえますか?
薄れゆく意識の中で、うわ言で必死に彼に訴えかけていた。
彼の家は小規模ながら代々、機械メーカーの事業を営んでいるらしい。
「父のコネで、エムテイの海外事業部に出向させてもらって、ずいぶん遊ばせてもらった。恥ずかしい話だけど。
僕は子供の頃からの夢があって、航空機のパイロットになりたかった。その夢は叶えられなかったけど、何とかそれに近いところで仕事がしたいとずっと考えていたんだ。エムテイの海外事業部のなかに航空機販売部門があって、それの一部を引き継いで国内で事業を立てることになったんだ。
ヘリコプターやセスナとかの小型航空機の売買を手掛ける事業だ。それだけじゃ無くて運行も手掛けていくように準備をしている。
僕が代表で、もう一人役員として僕の友人がいる。そいつは中学高校の同級生で、エムテイの出身者だ。僕よりもよほど優秀で有能だし、落ち着いている。真面目で、多少頭が固いところがあって融通がききにくいんだが、その分周りからの信頼は厚い。
メンバーは、僕が声をかけたのは、語学が堪能な貿易事務の外国籍の女性たちと、コンピュータの専門家と……。あと、君と。少人数だが、これくらいで回していく」
その話を聞いて私には驚きしかない。この店につれてこられた以上の萎縮を感じる。
「……私は、関係ないですよね。無理です。そんなの聞いたら、余計に……。私は、蚊帳の外です。私以外は、みなさん優秀で、みんなお知り合い同士で。どうして、私がそこにいられると思いますか? 不自然ですよね?」
メンバーがエムテイの人だったら、今は自分のことを知らなくても、いつか、私の悪い噂は耳に入るかもしれない。それは、他人にとっては何とも思わないことかもしれない。だけど、私が意識していつまでも立ち直れない。
「ちょっと待て、当分は新しい事務所にいるのは、僕と友人の二人だけだ。そこに君を迎えようと……」
焦った私には、彼の言うことは聞こえていなかった。
「今だって、このお食事だって、どうしてこんなことしてくれるんですか? 怪しいですよ。おかしいですよ。赤の他人にそこまでする理由ってありますか?」
私は、そこまで言うと、目の前に雑に並べられた、たくさんの現金の束が見えた。それは、私にとって思い出したくもない光景だ。
(そう。私は赤の他人なのに、どうして向井さんはあんな大金を……)
「どうしてって、そうだな。ちゃんと理由はある。でも、今は言えない」
「何ですか、それ……」
その時、自分の記憶に反応して、急に身体がおかしくなった。冷や汗がだらだらと出て、心臓も壊れるんじゃないかと思うくらい激しく脈動して、呼吸のし方を忘れたんじゃないかと思うくらい息苦しくなった。
(何これ……?)
私は自分の胸ぐらを掴んでどうにか呼吸を確保しようとした。
「どうした?」
村岡さんが慌てて、店員を呼んでいた。
「大丈夫です……」
だめだ、全く声にならない。
これは、過呼吸症候群と言われるものだと思った。しかし、経験するのは初めてだ。私は一刻も早くこの場を去りたい衝動で、立ち上がろうとした瞬間、めまいがして目の前が真っ暗になった。遠くで何かが割れるような音を聞いた。
過呼吸症候群で意識消失なんてフツー聞かないですよね? ずっと食べていないし、眠れていないせいだと思います。私は、自分の健康管理すらまともにできないダメな社会人なんです。これでわかりましたよね? この話はなかったことにしてもらえますか?
薄れゆく意識の中で、うわ言で必死に彼に訴えかけていた。