霊感御曹司と結婚する方法
「やっぱり、今日はもう帰る?」
吉田さんが、帰り支度をする私を見て言った。
「はい。やっぱり調子が悪いみたいで、帰ります」
彼は私の席の側までやって来て言った。
「あのさ……、立ち入ったことを聞くけど」
「何でしょう?」
「神崎さんの体調が悪いのって、どういう理由?」
彼は真面目な顔をして聞いてきた。
私は彼にそこをつかれるとは思っても見なかった。でも、確かにこのところ、事務所で眠そうにしていたり、頭痛に苦しんでいた姿を彼に見られていたかもしれない。
その体調不良の理由といっても、精神的なものだし、亡くなった向井さんに絡むことが原因だし、誰にも話したくないことだから、どう答えようかと戸惑ってしまった。
「えっと……。そうですね」
私が答えにくそうにしていたら、吉田さんは何か勘違いしたらしく焦っていた。
「あ……、いや。ゴメン。女性にそういうことを聞くもんじゃないよね」
彼がそんなことを聞きたくて聞いたわけではないのは当然わかっている。悩み事があるのではないかという心配をしてくれているのだろう。だからできるだけ、ごまかさないで言おうと思った。
「昨日あまり眠れていないだけです。はずかしい話ですけど……。病気とかじゃないです」
「それはそれで心配だよ。このところ、君があまり具合が良くなさそうというか、元気がないことは、ずっと気づいてはいたんだ」
「さっきもいいましたけど、お仕事のことで悩みはありません」
「それならいいけど……」
「少し前は私なりに深刻な悩み事があって、それでしばらく本当に眠れない時があったんです。そのときに比べたら、今は全然大丈夫なんです」
「退職の時のこと?」
「ま……、そうですね。お見通しですね」
「そうか。僕のことが近寄りがたいとか、そんなんじゃなかったらいいんだ」
「あ……、もちろんそんなことないです」
彼に対して負い目があるから近づきにくいという気持ちはあった。でも、彼に気をつかわせていたとは気づいていなくて申し訳なく思った。
「何か困ったことがあるなら、僕にも言ってよ。何か相談にのれることがあるかもしれないし」
「そうですね……。吉田さんにそう言ってもらえたら、すごく人生そのものが心強いです」
困ったことといえば、あの金銭トラブルが起きた時、彼のような法律に詳しい人が近くにいたら、どんなに心強かったかしれない。
終わったことだし、彼がそのことを知るわけもないが、そういうことを思った。
「少し大げさに聞こえるけど……」
彼は私の顔を見ることなく微笑んで、自分の席に戻っていった。
吉田さんが、帰り支度をする私を見て言った。
「はい。やっぱり調子が悪いみたいで、帰ります」
彼は私の席の側までやって来て言った。
「あのさ……、立ち入ったことを聞くけど」
「何でしょう?」
「神崎さんの体調が悪いのって、どういう理由?」
彼は真面目な顔をして聞いてきた。
私は彼にそこをつかれるとは思っても見なかった。でも、確かにこのところ、事務所で眠そうにしていたり、頭痛に苦しんでいた姿を彼に見られていたかもしれない。
その体調不良の理由といっても、精神的なものだし、亡くなった向井さんに絡むことが原因だし、誰にも話したくないことだから、どう答えようかと戸惑ってしまった。
「えっと……。そうですね」
私が答えにくそうにしていたら、吉田さんは何か勘違いしたらしく焦っていた。
「あ……、いや。ゴメン。女性にそういうことを聞くもんじゃないよね」
彼がそんなことを聞きたくて聞いたわけではないのは当然わかっている。悩み事があるのではないかという心配をしてくれているのだろう。だからできるだけ、ごまかさないで言おうと思った。
「昨日あまり眠れていないだけです。はずかしい話ですけど……。病気とかじゃないです」
「それはそれで心配だよ。このところ、君があまり具合が良くなさそうというか、元気がないことは、ずっと気づいてはいたんだ」
「さっきもいいましたけど、お仕事のことで悩みはありません」
「それならいいけど……」
「少し前は私なりに深刻な悩み事があって、それでしばらく本当に眠れない時があったんです。そのときに比べたら、今は全然大丈夫なんです」
「退職の時のこと?」
「ま……、そうですね。お見通しですね」
「そうか。僕のことが近寄りがたいとか、そんなんじゃなかったらいいんだ」
「あ……、もちろんそんなことないです」
彼に対して負い目があるから近づきにくいという気持ちはあった。でも、彼に気をつかわせていたとは気づいていなくて申し訳なく思った。
「何か困ったことがあるなら、僕にも言ってよ。何か相談にのれることがあるかもしれないし」
「そうですね……。吉田さんにそう言ってもらえたら、すごく人生そのものが心強いです」
困ったことといえば、あの金銭トラブルが起きた時、彼のような法律に詳しい人が近くにいたら、どんなに心強かったかしれない。
終わったことだし、彼がそのことを知るわけもないが、そういうことを思った。
「少し大げさに聞こえるけど……」
彼は私の顔を見ることなく微笑んで、自分の席に戻っていった。