霊感御曹司と結婚する方法
遠城さんは、ここで一旦わざとらしい咳ばらいをした。
「ところで、蒼子ちゃん、キレイなコよね。素朴な感じの」
「会ったんですか?」
「ついこないだから」
「遠城さんにはどう見えましたか? 彼女」
「そうねえ……。元気がないかな。なんか死にたがっているみたいな。向こうが透けてみえそうな感じよ」
俺は、遠城さんの観察眼に驚いていた。
「吉田くんから彼女のことを聞いたのよ。彼は、村岡くんがどこからか連れてきたみたいなことを言っていて、何か事情があるのかなとは思ってたんだけど」
「何かありましたか?」
「彼女とおしゃべりしてて、偶然わかったことなんだけど、彼女の死んだ元カレ、私の親友だったのよ。あなたも彼のこと、知っていたの?」
「いや、それは知らない……」
「表情には出さないけど、あなた今、すごく驚いているんでしょう?」
「そうですけど、蒼子が付き合っていた相手が、うちの社員だったことや、既に亡くなっていることとかは知っていました。裏事情で」
「ふーん……」
「そういうこととは関係なく、彼女とは偶然出会ったんです。話ししたら、うちの社員だと言うし、もうすぐやめるというから、うちの事務員に誘ったんです」
「そう。知らなかったとはいえ、私、ちょっと、その向井くんのことで、いらないことを彼女に吹き込んだかもしれない。彼のことで自分を責めてなければいいけど……」
「責めるって?」
「彼女にとっては不倫の関係を受け入れてしまったことよ。向井くんは何も解決しないで旅立ってしまったからね。彼女はその事に責任を感じている」
遠城さんは、グラスに一口つけてから言った。
「彼女からは、向井くんのことは聞いてないの?」
「何も」
「それはそうね。好きな男に元カレの話なんかしないわよね」
遠城さんは、意味ありげな顔でこちらを向いて言った。
「一緒に暮らしているの?」
「違いますよ。一線は引いています」
「彼女から村岡くんの部屋を借りて住んでいるって聞いたけど」
「成り行きです。準備する時間もないままこっちに呼んだわけですから」
「でも、自分の部屋に住まわせて、女の方は勘違いしないほうがおかしいわよね」
「……勘違いしてくれても構いません」
「そうなの? でも、あなた、既に結婚が決まっているんじゃないの? お兄さんには逆らえないんじゃないの?」
「……そんなことはありませんが」
確かに俺にはそういう話はある。
俺の知らないところで勝手に進められているようだが、相手のこともあると思うから、首を洗って待つほどのことではないと考えている。だが、兄が結婚しろというなら、確かに逆らえないかもしれない。
「あとね、吉田くん、彼女のこと意識している」
「吉田が?」
ひと月ほどの俺の出張中は、確かにオフィスでは吉田と蒼子を二人にしていた。今まで、吉田は女気のない男だったから、そのことは気にも留めていなかった。
「私は、すぐわかったわよ。大丈夫なの? 三角関係はつらいわよ」
遠城さんは、真顔で言った。
確かに俺は、考えもなしで行き当たりばったりな行動をとっている。遠城さんのような人に指摘されて立ち止まって考えると、事態は良くない方向に進んでいるような気もするのだ。
「ところで、蒼子ちゃん、キレイなコよね。素朴な感じの」
「会ったんですか?」
「ついこないだから」
「遠城さんにはどう見えましたか? 彼女」
「そうねえ……。元気がないかな。なんか死にたがっているみたいな。向こうが透けてみえそうな感じよ」
俺は、遠城さんの観察眼に驚いていた。
「吉田くんから彼女のことを聞いたのよ。彼は、村岡くんがどこからか連れてきたみたいなことを言っていて、何か事情があるのかなとは思ってたんだけど」
「何かありましたか?」
「彼女とおしゃべりしてて、偶然わかったことなんだけど、彼女の死んだ元カレ、私の親友だったのよ。あなたも彼のこと、知っていたの?」
「いや、それは知らない……」
「表情には出さないけど、あなた今、すごく驚いているんでしょう?」
「そうですけど、蒼子が付き合っていた相手が、うちの社員だったことや、既に亡くなっていることとかは知っていました。裏事情で」
「ふーん……」
「そういうこととは関係なく、彼女とは偶然出会ったんです。話ししたら、うちの社員だと言うし、もうすぐやめるというから、うちの事務員に誘ったんです」
「そう。知らなかったとはいえ、私、ちょっと、その向井くんのことで、いらないことを彼女に吹き込んだかもしれない。彼のことで自分を責めてなければいいけど……」
「責めるって?」
「彼女にとっては不倫の関係を受け入れてしまったことよ。向井くんは何も解決しないで旅立ってしまったからね。彼女はその事に責任を感じている」
遠城さんは、グラスに一口つけてから言った。
「彼女からは、向井くんのことは聞いてないの?」
「何も」
「それはそうね。好きな男に元カレの話なんかしないわよね」
遠城さんは、意味ありげな顔でこちらを向いて言った。
「一緒に暮らしているの?」
「違いますよ。一線は引いています」
「彼女から村岡くんの部屋を借りて住んでいるって聞いたけど」
「成り行きです。準備する時間もないままこっちに呼んだわけですから」
「でも、自分の部屋に住まわせて、女の方は勘違いしないほうがおかしいわよね」
「……勘違いしてくれても構いません」
「そうなの? でも、あなた、既に結婚が決まっているんじゃないの? お兄さんには逆らえないんじゃないの?」
「……そんなことはありませんが」
確かに俺にはそういう話はある。
俺の知らないところで勝手に進められているようだが、相手のこともあると思うから、首を洗って待つほどのことではないと考えている。だが、兄が結婚しろというなら、確かに逆らえないかもしれない。
「あとね、吉田くん、彼女のこと意識している」
「吉田が?」
ひと月ほどの俺の出張中は、確かにオフィスでは吉田と蒼子を二人にしていた。今まで、吉田は女気のない男だったから、そのことは気にも留めていなかった。
「私は、すぐわかったわよ。大丈夫なの? 三角関係はつらいわよ」
遠城さんは、真顔で言った。
確かに俺は、考えもなしで行き当たりばったりな行動をとっている。遠城さんのような人に指摘されて立ち止まって考えると、事態は良くない方向に進んでいるような気もするのだ。