霊感御曹司と結婚する方法
霊感御曹司の恋の手腕 ー糾司視点ー
駐車場に戻り、車のエンジンをスタートさせた。イライラがおさまらない。ふと助手席に目をやる。
(別の女を乗せられるかよ)
やっと解放された気分で、駐車場を出る前に蒼子にかけてみた。しかし、なかなか出てくれそうになかった。時刻は、午後九時前といったところだ。
(でないか……)
諦めて切ろうとしたときに繋がった。
「……お待たせしてすみません。ちょっと手がはなせなくって。何かありましたか?」
どれくらいぶりに聞けた声だろうか。出てくれた事を思った以上に安堵している自分がいた。
「……あ、夜分悪い。家にいるか? 今から少し出られないか? あと三十分くらいかかるとは思うが」
彼女の了承を得て、マンションの駐車場についたら連絡を入れると言って電話を切った。
駐車場に出てきた彼女は、ジーンズに白のチェックのシャツを羽織って、髪は後ろで纏めてピンで留めている。相変わらず小ざっぱりとしたいで立ちだ。
さっきの義姉とは対照的だ。
彼女が助手席に乗り込んでくると、ほのかに良い香りが漂った。
「もしかして、もう寝るつもりにしていたか?」
「食事もお風呂も済んであとは寝るだけでした。これから、どこに行くんですか?」
彼女はシートベルトを装着しながら言った。
「日本に帰ってきて、久々に運転がしたいだけで、あてはない」
すぐに駐車場を出て車を走らせた。
さっき電話をかけた時に、なかなか出なかったのは風呂に入っていたからか……と、妙な妄想が湧き上がってくる。
「今日はどうかしましたか?」
ここで俺の方を見て言った。
「別に用事はない。ただ、しばらく会っていなかったから、すぐに顔が見たかっただけだ」
「……時差ボケしたら、寝言も言うんですね」
彼女は、フロントガラスの方に顔を向けて、無愛想に言った。
彼女のそっけない態度は俺には予想外だったが気にしていない風を装う。
「俺のいない間、何をしていた?」
「そうですね……。いろいろ。とにかく色々。会社では吉田さんが色々指南してくれたし、遠城さんにも色々教わって……」
適当に答えている感がありありだ。それに、吉田の指南ってなんだ?
昨日、遠城さんに言われた言葉を思い出す。
──吉田くん、彼女のことを意識している。私はすぐわかったわよ。
俺は、なぜ今それを思い出すのか?
「なあ、無理に呼びつけたことを怒っているのか?」
「無理して来たわけではありません。たとえそうでも、私が村岡さんに向かって、怒るワケないです」
「なんでだ?」
「恩人だからです」
また、昨日、遠城さんに言われたことを思い出す。
──自分の部屋に住まわせて、勘違いしないほうがおかしいわよね。
面白くない答えに、いっそ、勘違いさせてやろうかと挑発的な気分になる。
俺はつのる苛立ちを悟られまいと、彼女に話しかけるのをやめて、しばらく黙っていた。そうしたら彼女の方から話しかけてきた。
「……出張先で何かありましたか?」
「別に何もない。仕事は順調そのものだ。心配には及ばない」
「機嫌悪いですよね?」
それはそっちだろう?という言葉をのみこんだ。
「……仕事と関係ないところで不快なことがあっただけだ。大した事ではないが、何かは言えない」
「そうですか」
そのあとは、互いに無言になってしまった。
当然、俺は彼女を誘ったことを後悔していた。
(別の女を乗せられるかよ)
やっと解放された気分で、駐車場を出る前に蒼子にかけてみた。しかし、なかなか出てくれそうになかった。時刻は、午後九時前といったところだ。
(でないか……)
諦めて切ろうとしたときに繋がった。
「……お待たせしてすみません。ちょっと手がはなせなくって。何かありましたか?」
どれくらいぶりに聞けた声だろうか。出てくれた事を思った以上に安堵している自分がいた。
「……あ、夜分悪い。家にいるか? 今から少し出られないか? あと三十分くらいかかるとは思うが」
彼女の了承を得て、マンションの駐車場についたら連絡を入れると言って電話を切った。
駐車場に出てきた彼女は、ジーンズに白のチェックのシャツを羽織って、髪は後ろで纏めてピンで留めている。相変わらず小ざっぱりとしたいで立ちだ。
さっきの義姉とは対照的だ。
彼女が助手席に乗り込んでくると、ほのかに良い香りが漂った。
「もしかして、もう寝るつもりにしていたか?」
「食事もお風呂も済んであとは寝るだけでした。これから、どこに行くんですか?」
彼女はシートベルトを装着しながら言った。
「日本に帰ってきて、久々に運転がしたいだけで、あてはない」
すぐに駐車場を出て車を走らせた。
さっき電話をかけた時に、なかなか出なかったのは風呂に入っていたからか……と、妙な妄想が湧き上がってくる。
「今日はどうかしましたか?」
ここで俺の方を見て言った。
「別に用事はない。ただ、しばらく会っていなかったから、すぐに顔が見たかっただけだ」
「……時差ボケしたら、寝言も言うんですね」
彼女は、フロントガラスの方に顔を向けて、無愛想に言った。
彼女のそっけない態度は俺には予想外だったが気にしていない風を装う。
「俺のいない間、何をしていた?」
「そうですね……。いろいろ。とにかく色々。会社では吉田さんが色々指南してくれたし、遠城さんにも色々教わって……」
適当に答えている感がありありだ。それに、吉田の指南ってなんだ?
昨日、遠城さんに言われた言葉を思い出す。
──吉田くん、彼女のことを意識している。私はすぐわかったわよ。
俺は、なぜ今それを思い出すのか?
「なあ、無理に呼びつけたことを怒っているのか?」
「無理して来たわけではありません。たとえそうでも、私が村岡さんに向かって、怒るワケないです」
「なんでだ?」
「恩人だからです」
また、昨日、遠城さんに言われたことを思い出す。
──自分の部屋に住まわせて、勘違いしないほうがおかしいわよね。
面白くない答えに、いっそ、勘違いさせてやろうかと挑発的な気分になる。
俺はつのる苛立ちを悟られまいと、彼女に話しかけるのをやめて、しばらく黙っていた。そうしたら彼女の方から話しかけてきた。
「……出張先で何かありましたか?」
「別に何もない。仕事は順調そのものだ。心配には及ばない」
「機嫌悪いですよね?」
それはそっちだろう?という言葉をのみこんだ。
「……仕事と関係ないところで不快なことがあっただけだ。大した事ではないが、何かは言えない」
「そうですか」
そのあとは、互いに無言になってしまった。
当然、俺は彼女を誘ったことを後悔していた。