霊感御曹司と結婚する方法
「村岡さん」
「ん?」
「私、グリーンを畳むってわかっていますよ」
「ああ……」
「それと、私、エムテイに戻れることになりました」
「……そうか。何でだ?」
少し前にエムテイの本社に出向いて人事本部で話をしてきた事を言った。そして、自分についた人事評価の撤回があって、エムテイに戻れることになったと言った。
「吉田さんが、そうしたほうがいいと言って後押ししてくれました。……村岡さんのためにも」
「何でだ? 俺は、関係ないだろう」
「私がエムテイを辞めた本当の理由を、村岡さんは、私を雇う前からご存知だったと、吉田さんから聞きました」
「そうだったかな」
「とぼけないでください。もう酔っているんですか?」
「酔っている。見たらわかるだろう?」
「嘘です」
「……うるさいな」
彼は、睨むように私を見た。
「……なんですか? その目は」
彼の男前の端正な顔つきを、私は初めて異性として意識したような気がした。でも、確かに酔っているかもしれないと思った。
「私、本当にありがたく思っています。ちゃんとお礼が言いたいんです。私を拾ってくださったことや、私の失敗を挽回するきっかけを作ってくださったことも」
「礼を言われるような事じゃない。法人としての行為に問題があることだと懸念しただけだ。君だけの為でもない」
「そんな言い方しなくても……」
「……君の個人的な事情を知りながら黙っていたことは、ずっと申し訳なくは思っていた。言っておくが、グリーンを畳むのは正式に決まったことじゃない」
「私もエムテイに戻れるんですから。希望をすれば、エムテイで今の仕事を継続させてもらえるかもしれません」
「……まあ、もう少し猶予をくれよ」
村岡さんは仏頂面で、またのみ始めた。
それを見て私はふっとため息が出た。
「村岡さんと結婚する人は、心が休まるときがないかもしれませんね」
「どうしてだ?」
「秘密も多いし」
「……悪かったな」
「その上、男前でモテそうだし」
「君にはそうじゃないと言ったと思うけどな」
「村岡さんと一緒になる人はそんなこと知らないですから、最初のうちにそう言ってあげたらいいと思います」
「覚えておくよ」
「吉田さんの結婚式は、私も呼んでくれますよね」
「当然だろう。呼ばれなくても俺が連れて行ってやるよ」
手酌でのんでいる村岡さんを差し置いて、私は夕食の片付けを始めた。
その間、少し酔った村岡さんの視線をずっと感じていた。
その日から村岡さんとの同居生活が始まった。彼はまだ足の怪我が完治していないから、私ができるだけの家事をした。
寝るときは私はずっと借りていた客間をそのまま使い、彼とは別々に眠った。
私は、吉田さんの結婚式を区切りと決めて、その日が来るまで、この生活の一日一日を大切にしようと思った。
「ん?」
「私、グリーンを畳むってわかっていますよ」
「ああ……」
「それと、私、エムテイに戻れることになりました」
「……そうか。何でだ?」
少し前にエムテイの本社に出向いて人事本部で話をしてきた事を言った。そして、自分についた人事評価の撤回があって、エムテイに戻れることになったと言った。
「吉田さんが、そうしたほうがいいと言って後押ししてくれました。……村岡さんのためにも」
「何でだ? 俺は、関係ないだろう」
「私がエムテイを辞めた本当の理由を、村岡さんは、私を雇う前からご存知だったと、吉田さんから聞きました」
「そうだったかな」
「とぼけないでください。もう酔っているんですか?」
「酔っている。見たらわかるだろう?」
「嘘です」
「……うるさいな」
彼は、睨むように私を見た。
「……なんですか? その目は」
彼の男前の端正な顔つきを、私は初めて異性として意識したような気がした。でも、確かに酔っているかもしれないと思った。
「私、本当にありがたく思っています。ちゃんとお礼が言いたいんです。私を拾ってくださったことや、私の失敗を挽回するきっかけを作ってくださったことも」
「礼を言われるような事じゃない。法人としての行為に問題があることだと懸念しただけだ。君だけの為でもない」
「そんな言い方しなくても……」
「……君の個人的な事情を知りながら黙っていたことは、ずっと申し訳なくは思っていた。言っておくが、グリーンを畳むのは正式に決まったことじゃない」
「私もエムテイに戻れるんですから。希望をすれば、エムテイで今の仕事を継続させてもらえるかもしれません」
「……まあ、もう少し猶予をくれよ」
村岡さんは仏頂面で、またのみ始めた。
それを見て私はふっとため息が出た。
「村岡さんと結婚する人は、心が休まるときがないかもしれませんね」
「どうしてだ?」
「秘密も多いし」
「……悪かったな」
「その上、男前でモテそうだし」
「君にはそうじゃないと言ったと思うけどな」
「村岡さんと一緒になる人はそんなこと知らないですから、最初のうちにそう言ってあげたらいいと思います」
「覚えておくよ」
「吉田さんの結婚式は、私も呼んでくれますよね」
「当然だろう。呼ばれなくても俺が連れて行ってやるよ」
手酌でのんでいる村岡さんを差し置いて、私は夕食の片付けを始めた。
その間、少し酔った村岡さんの視線をずっと感じていた。
その日から村岡さんとの同居生活が始まった。彼はまだ足の怪我が完治していないから、私ができるだけの家事をした。
寝るときは私はずっと借りていた客間をそのまま使い、彼とは別々に眠った。
私は、吉田さんの結婚式を区切りと決めて、その日が来るまで、この生活の一日一日を大切にしようと思った。