霊感御曹司と結婚する方法
私が夕食を作って出すと彼は喜んで食べてくれる。それを見るだけでじゅうぶん幸せな気分に浸れる。
「母は、全然料理をしないんだ」
「お金持ちですしね。必要ないでしょう」
「そういう理由ではないんだ。もともと家事能力が備わっていないらしい。子どもの頃は、それにかける時間も惜しんで勉強に没頭していたと言った」
「どんなお母様でしょう?」
多少、というか随分、変わっている人ではないかな? という想像はあったが、言わなかった。
「母は、君に一度あっているらしい。……というかすれ違ったくらいだろうが、そう言った」
「え……? いつですか?」
「俺の入院中しかないだろ」
「それなら……」
なんか、覚えがあるかもしれない。病院の廊下かどこかで、質素だが上品で、ちょっと纏った空気が普通の人と違う老婦人と目があった事がある。どういう人だろうと彼女を視認した時から見ていたら、お互いに目があって思わず会釈をしてしまった。たぶんそれだ。思い起こせば、村岡さんと顔つきが似ていたような気がする。
それで、向こうが私のことをわかったというのが不思議だが、同じ男を愛するもの同士のシンパシーなのか。
そのことを村岡さんに伝えたら思いがけない反応がきた。
「上品な老婦人? 他人からはそう見えるのかもしれないが、母の生まれは、とんでもない貧乏の家なんだ」
大金持ちが言う、とんでもない貧乏とはどの程度をいうのだろうかと、気にはなったが、そこはスルーした。
「……じゃあ、ものすごい玉の輿で結婚をされたんですね?」
「まあ、世間一般的な見方で言えば、結果としてそうなったと言えるだろう。だがなあ、その経緯がなあ、二人ともなあ、重苦しいというか、軽々しくないというかなあ……」
「別に、言いにくいことなら無理に教えてくれなくてもいいです」
「君になら言っても、母は許してくれるかなあ……」
村岡さんは、うだうだ言いながらも、彼のお母さんが、村岡家に嫁ぐ経緯を教えてくれた。
まず、この間亡くなったお兄さんとは、異母兄弟であったことを、教えてくれた。そのことを知っただけでも、私には驚きだった。
「歳が随分と離れているって、そういう理由だったんですね」
「まあ、そうだ」
村岡さんのお父さんとお母さんの出会いは、お父さんが前の奥さんを病気で亡くされてから、間もない頃の話だという。
「母は、全然料理をしないんだ」
「お金持ちですしね。必要ないでしょう」
「そういう理由ではないんだ。もともと家事能力が備わっていないらしい。子どもの頃は、それにかける時間も惜しんで勉強に没頭していたと言った」
「どんなお母様でしょう?」
多少、というか随分、変わっている人ではないかな? という想像はあったが、言わなかった。
「母は、君に一度あっているらしい。……というかすれ違ったくらいだろうが、そう言った」
「え……? いつですか?」
「俺の入院中しかないだろ」
「それなら……」
なんか、覚えがあるかもしれない。病院の廊下かどこかで、質素だが上品で、ちょっと纏った空気が普通の人と違う老婦人と目があった事がある。どういう人だろうと彼女を視認した時から見ていたら、お互いに目があって思わず会釈をしてしまった。たぶんそれだ。思い起こせば、村岡さんと顔つきが似ていたような気がする。
それで、向こうが私のことをわかったというのが不思議だが、同じ男を愛するもの同士のシンパシーなのか。
そのことを村岡さんに伝えたら思いがけない反応がきた。
「上品な老婦人? 他人からはそう見えるのかもしれないが、母の生まれは、とんでもない貧乏の家なんだ」
大金持ちが言う、とんでもない貧乏とはどの程度をいうのだろうかと、気にはなったが、そこはスルーした。
「……じゃあ、ものすごい玉の輿で結婚をされたんですね?」
「まあ、世間一般的な見方で言えば、結果としてそうなったと言えるだろう。だがなあ、その経緯がなあ、二人ともなあ、重苦しいというか、軽々しくないというかなあ……」
「別に、言いにくいことなら無理に教えてくれなくてもいいです」
「君になら言っても、母は許してくれるかなあ……」
村岡さんは、うだうだ言いながらも、彼のお母さんが、村岡家に嫁ぐ経緯を教えてくれた。
まず、この間亡くなったお兄さんとは、異母兄弟であったことを、教えてくれた。そのことを知っただけでも、私には驚きだった。
「歳が随分と離れているって、そういう理由だったんですね」
「まあ、そうだ」
村岡さんのお父さんとお母さんの出会いは、お父さんが前の奥さんを病気で亡くされてから、間もない頃の話だという。