霊感御曹司と結婚する方法
終章
夜間飛行
年が明けて少し経った頃、私は、村岡さんと吉田さんに同行してヘリコプターの運行会社の整備倉庫に来ていた。倉庫には何機かのヘリコプターが格納されていて、照明に照らされてピカピカに輝いていた。
「綺麗ですね。どの機体も」
「商品だし、磨いているしね」
「彼女はデザインのことを言っているんだ。そうだろ?」
「……どちらの意味もです」
私は苦笑いして言った。確かに吉田さんは、こういうのにはもともと興味がなくて疎い。吉田さんは、さっさと一人で倉庫の一角にある事務所に向かって行った。
「いいだろう? ここにあるのは全部中古なんだ。整備のたまものだ。これなんか、四十年前の機体だが普通に現役だ。さすがに中身は換装してあるがな」
「村岡社長、オッケーです。今から行けます」
事務所の方から男の人の声がした。村岡さんがニコニコして私に言った。
「ここの社長さんだ。これから、乗せてもらうことになっている。俺の快気祝いだそうだ」
「あと半時間ほどで日没ですよ?」
私は手元の時計を見て言った。
「天候がいいからナイトフライトだ。君もだ」
聞いていない。
「……吉田さんは?」
「あいつはダメだ。高いところが。今日は書類の確認だけだし、それは吉田にやってもらう」
購入した航空機の整備と運行を任せる会社との事業提携だ。この話に漕ぎつけるのに村岡さんは長いこと頑張っていた。
各航空機の運行予定と整備状況、各パイロットの保持資格と累計の飛行時間、予定等を全て一元管理してクラウド上で展開する運行管理システムを、この運行会社に持ち込んで事業提携に承諾を得た。
「上空は寒いぞ」
村岡さんはいつの間にか、防寒着を乗ってきた車のトランクから持ち出してきて、一方を私に手渡してくれた。
「すみませんね。この機体は一応空調はついていますけど、あまり快適とはいえないかもしれません」
初老のパイロットがやって来て準備をしながら付け加えた。乗せてもらえるのは、小型のヘリコプターで、三人が定員らしい。
「俺はこれがいいと言ったんだ。下までよく見えるからな」
機体に乗り込む時は、彼は私の腕を掴んで、引き上げてくれた。彼の足の怪我もずいぶんと良くなっている。
実は、この間から彼とは少し気まずかった。私が言ったことが原因で。彼の方はどう思っていたかは知らないけど、こうやって彼が、私に気をつかってくれていることが、素直に嬉しかった。
「綺麗ですね。どの機体も」
「商品だし、磨いているしね」
「彼女はデザインのことを言っているんだ。そうだろ?」
「……どちらの意味もです」
私は苦笑いして言った。確かに吉田さんは、こういうのにはもともと興味がなくて疎い。吉田さんは、さっさと一人で倉庫の一角にある事務所に向かって行った。
「いいだろう? ここにあるのは全部中古なんだ。整備のたまものだ。これなんか、四十年前の機体だが普通に現役だ。さすがに中身は換装してあるがな」
「村岡社長、オッケーです。今から行けます」
事務所の方から男の人の声がした。村岡さんがニコニコして私に言った。
「ここの社長さんだ。これから、乗せてもらうことになっている。俺の快気祝いだそうだ」
「あと半時間ほどで日没ですよ?」
私は手元の時計を見て言った。
「天候がいいからナイトフライトだ。君もだ」
聞いていない。
「……吉田さんは?」
「あいつはダメだ。高いところが。今日は書類の確認だけだし、それは吉田にやってもらう」
購入した航空機の整備と運行を任せる会社との事業提携だ。この話に漕ぎつけるのに村岡さんは長いこと頑張っていた。
各航空機の運行予定と整備状況、各パイロットの保持資格と累計の飛行時間、予定等を全て一元管理してクラウド上で展開する運行管理システムを、この運行会社に持ち込んで事業提携に承諾を得た。
「上空は寒いぞ」
村岡さんはいつの間にか、防寒着を乗ってきた車のトランクから持ち出してきて、一方を私に手渡してくれた。
「すみませんね。この機体は一応空調はついていますけど、あまり快適とはいえないかもしれません」
初老のパイロットがやって来て準備をしながら付け加えた。乗せてもらえるのは、小型のヘリコプターで、三人が定員らしい。
「俺はこれがいいと言ったんだ。下までよく見えるからな」
機体に乗り込む時は、彼は私の腕を掴んで、引き上げてくれた。彼の足の怪我もずいぶんと良くなっている。
実は、この間から彼とは少し気まずかった。私が言ったことが原因で。彼の方はどう思っていたかは知らないけど、こうやって彼が、私に気をつかってくれていることが、素直に嬉しかった。