霊感御曹司と結婚する方法
村岡さんは、少し沈黙をおいて、ここで吉田さんの方を向いた
「……兄がここにいたら何というかなんて、やっぱり思いつかない。兄はきっと君のことをこの場で褒めちぎったに違いないだろう。兄は喋りも一級だったし、俺もそれが聞きたかった。
ここに立てば、ここで困っている俺を見かねて、兄がまた俺の傍らに来てくれるかもしれないと思ったんだが、そうはならないようだ。まあ、兄は次の仕事があると言って旅立ってしまったからな。
俺は兄を亡くして初めて、兄の後ろ盾がなければ何もできない自分に気がついて、自分の不甲斐なさと、兄の偉大さをやっと理解する始末だ。そして、吉田、君の存在の大きさにも。
俺は、君と兄が似ていると言ったが、君に兄の意志を引き継いでほしいとか、そういうつもりは全くない。兄もそんなことは絶対に望まない。
自分のことしか頭にない連中は、勝手にそう思っているのかもしれないがな。優秀すぎる君を利用するかのように。
もし、それを兄に相談したとしても、たぶん大した答えは返ってこないと思う。吉田なら大丈夫だろうくらいにしかきっと言わない。
俺ももちろんそう思う。
何というかな、君は兄になかった運の良さも持ち合わせているからな。何かに護られているというか、そういう天から授かったものだ。
だから、俺ごときが今ここで言えるのは、大したことはなくて、もうこれで最後にしておく。
俺は心のそこから、君の幸せを願っている。
以上だ」
吉田さんは、ずっと泣いていた。涙で顔がぐしゃぐしゃになるくらい。
一方の村岡さんは、始終ケロっとしていたのが印象的だった。泣かしてやったとでもいう顔だ。
隣に座る遠城さんは、場をわきまえているのか、意外にも平然としていた。彼女の横顔を見て、この人もすごい人だなあと改めて思う。
この二人が、この境地に至った道のりを思うと、やりきれないものもある。
「……兄がここにいたら何というかなんて、やっぱり思いつかない。兄はきっと君のことをこの場で褒めちぎったに違いないだろう。兄は喋りも一級だったし、俺もそれが聞きたかった。
ここに立てば、ここで困っている俺を見かねて、兄がまた俺の傍らに来てくれるかもしれないと思ったんだが、そうはならないようだ。まあ、兄は次の仕事があると言って旅立ってしまったからな。
俺は兄を亡くして初めて、兄の後ろ盾がなければ何もできない自分に気がついて、自分の不甲斐なさと、兄の偉大さをやっと理解する始末だ。そして、吉田、君の存在の大きさにも。
俺は、君と兄が似ていると言ったが、君に兄の意志を引き継いでほしいとか、そういうつもりは全くない。兄もそんなことは絶対に望まない。
自分のことしか頭にない連中は、勝手にそう思っているのかもしれないがな。優秀すぎる君を利用するかのように。
もし、それを兄に相談したとしても、たぶん大した答えは返ってこないと思う。吉田なら大丈夫だろうくらいにしかきっと言わない。
俺ももちろんそう思う。
何というかな、君は兄になかった運の良さも持ち合わせているからな。何かに護られているというか、そういう天から授かったものだ。
だから、俺ごときが今ここで言えるのは、大したことはなくて、もうこれで最後にしておく。
俺は心のそこから、君の幸せを願っている。
以上だ」
吉田さんは、ずっと泣いていた。涙で顔がぐしゃぐしゃになるくらい。
一方の村岡さんは、始終ケロっとしていたのが印象的だった。泣かしてやったとでもいう顔だ。
隣に座る遠城さんは、場をわきまえているのか、意外にも平然としていた。彼女の横顔を見て、この人もすごい人だなあと改めて思う。
この二人が、この境地に至った道のりを思うと、やりきれないものもある。