愛は手から零れ落ちる
車の往来が多いホテル横の道、皆結構スピードを出して走っている。
正人さんは私を車とは逆側に歩かせてくれた。
「危ないから気を付けないとね。」
正人さんはそういうところも優しい。私はこの人で良かったと心底思った。
横断歩道で信号が変わるのを二人並んで待った。
一台の車が信号が変わる前にとスピードを出して右折しようとした。
前から走って来たバイクも信号が変わる前にとスピードを出して直進してきた。
そして車とバイクが接触した。
バイクに乗っていた男性は放り出され、転倒したバイクが勢いよくこちらに滑ってきた。
「朋美危ない!!」
「キャー イヤァー」
正人さんにバイクがぶつかった。
私は正人さんが突き飛ばしてくれた。
傘が空を舞うのがなぜかゆっくり見えた・・・
「正人さん、正人さん・・・」
いくら叫んでも返事はなかった。
音がすごかったので野次馬が集まった。その中の一人が、救急車を呼んでくれたみたいだ。
正人さんが救急車に乗せられ、私も同乗した。
病院に着き、正人さんは緊急手術を受けた。
・・・でも、間に合わなかった。
正人さんは亡くなった。
医師が私になにやら説明をしていたが、ほとんど聞こえなかった。徐々に意識が遠くなり、私はそこで倒れた。