一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました




時間は少し遡り、ここは新婦の控え室。


窓際の椅子に座り快晴の空を見つめながら、出番の時間がくるのを静かに待つ一人の花嫁がいた。


この日のために伸ばした髪を襟足でまとめるローシニヨンのヘアスタイルと、シルバーの小さな花が散りばめられたベッドピースが常に光を放つ。

身に纏うAラインのオフホワイトウェディングドレスは、露出されたデコルテから背中までを花柄のレースで覆い上品に仕上げられており。

繊細なビーディング加工が胸元から裾まで散りばめられていた。


するとドアをノックする音が鳴り響き、花嫁姿の繭が返事をする。



ガチャ!


「ママ〜!」
「咲!」



可愛らしい淡いピンクを基調とした花冠に、繭のドレスに合わせたオフホワイトのチュールスカートの女の子。

まるで人間界に舞い降りてきた妖精のようなこの子が、三歳になった繭と椿の愛娘である、天川咲だ。

咲は繭の姿を見るや否や駆け寄って、満面の笑みを向けてくる。



「ママ、ぷりんせすだね〜!」
「ありがとう、咲もとっても可愛い!」
「ありがとっ」



メイクも施してもらい、いつもよりお姉さんになった自分を、咲自身も気に入っていた。

すると咲をここまで連れてきてくれたパーティードレス姿の凛が、閉めたドアに背もたれながら話し始める。



「着替え中もメイク中も、ママはママは?ってうるさいから連れてきたわよ」
「すみません、こんな可愛くしてくれてありがとうございます」
「まあ、どんな子も可愛くするのがアパレルに携わる者としての役目だしっ」



照れ隠しのように顔を逸らしながらも、カッコいい台詞を吐いた凛は、さすがアパレル会社の若き社長である。



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