一夜限りのお相手が溺愛先生へと変貌しました




「(流石椿さん……柔軟に対応できてる)」



繭と結婚したいと言っている以上、その母親には好かれておいて損はない椿だが。
きっとそれらを除いても、人柄的にこういう対応をするだろうと繭は心配していなかった。


しかし肝心の繭がプロポーズの返事を曖昧にしてしまっているので、お試し期間中の二人の関係性は誤解を招かないためにも"友人"と判断し説明した椿。


ただ、それは望んでいる返答ではなかった様子の母が、初対面にも関わらず遠慮もないまま質問を投げかける。



「あら、友人って嘘でしょ?」
「お、お母さんッ!?」



何かを勘付いている母からの指摘で体が強張る繭は、マスターを通してバーで知り合った友人である事は嘘ではないと弁明しようとした。

しかしその説明を聞くより先に、母の推理は始まってしまう。



「だって、ちょっと体調不良ってだけで友人が家までくる?こんなにたくさん買い込んで?」
「わ、私が頼んだの!」
「あんたさっきビックリしてたくせに」
「ぐっ……!!」



椿が持っている膨れた買い物袋と、先程お迎えした時の繭の反応を目にした母は、核心に迫る問いを椿に向けた。



「あなた、繭の事好きなの?」



椿を真っ直ぐと見つめる繭の母の瞳は、まるで椿を試しているかのようにグッと力が込められていて、その奥には娘の幸せを願う親心が伺えた。

一方、母の隣で固まる繭は、あまりに唐突すぎる出来事に口を開けて絶句している。

すると、一瞬驚いた表情をしていた椿は、直ぐに目尻を垂らして嘘偽りなく答えた。



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