大正浪漫 斜陽のくちづけ
「んっ! あっ……」
ようやく唇が離れると、抗議するように相楽を睨む。
「くるし…っ」
こういう妙に女に慣れたようなところが凛子を不安にさせる。
ふいにセツの顔がよぎった。
──あの人にもこんなふうに触れたのだろうか。
凛子は幼い顔立ちに合ったほっそりとした体型だから、豊満さはない。セツを思い出し、劣等感に苛まれた。
無意識に涙が一滴頬を伝う。
「どうした」
涙を拭う指や声が優しくて余計辛くなる。なにもかも忘れて愛される夢が見れたら、どんなにか幸せだろう。
「少し……心細くなって」
髪を撫でる手が優しいのにも心が痛くなる。
相楽は表面上は凛子を妻として丁重に扱うつもりなのだろう。
だが凛子は嘘や打算のない愛が欲しかった。
今さら自分の気持ちに気づき、もう得られないものなのだと思うと、悲しみがさざ波のように押し寄せてきた。
なにも知らない夫が、慰めるような口づけが頬やおでこに落ちてくる。
「大切にする」
優しい声なのが、逆に傷に塩でも塗られたようで余計に心が痛んだ。
こんなふうに優しい言葉にすらも傷ついてしまう。覚悟が必要だと思った。
「嫌か?」
掠れたその声には、どこか傷ついたような響きがあった。
否定する間もなく、罰でも与えるように薄絹の上から胸の中心を吸われ、その刺激の強さに小さく悲鳴をあげて、凛子はのけぞった。
相楽は凛子の戸惑いをよそに、たくましい腕でその身を閉じ込め、執拗にそこを攻め立てた。
「ひ、いやぁ」
飢えたようにきつく吸われ、か細い悲鳴をあげる。舌で転がされて軽く歯を立てられると、薄絹の下で中心が固くなる。
「やっと手に入れたんだ。どれだけ俺があなたに焦がれたか」
執拗な舌技に下腹部が痺れたように熱くなり、足の間が生ぬるく濡れてくるのがわかる。
「凛子……」
耳奥に響く低い声を聴くと、酩酊したようになにも考えられなくなってくる。
上半身を抱き上げ、唾液で透けた夜着を凛子の腕から抜く。されるがままになっていると目が合う。
「恥ずかしい?」
わざと意地悪く羞恥を煽っている。じわじわと凛子を追いつめるのを楽しんでいるように見えた。
散々舌で嬲られ赤く尖った胸の先端を手で隠すと、すぐに押し倒されて、今度は直接胸を揉みしだかれ、きつく吸われた。