純・情・愛・人
「大地じゃなくても・・・二人目は男の子かも、・・・しれないし」

自分の声がうわごとのように聞こえた。

「それなら、いらないでしょ・・・?」

「・・・次が男でも大地に継がせる」

宗ちゃんの眼差しは静かに凪いでいた。

更にわたしは混沌へと追い落とされた。どうしてそんなに冷静なのか、初めて宗ちゃんが分からない。分からなくて怖い。コワイ。

「俺が惚れた女はお前だけだ。だからこそ大地に愛情も湧く、血を分けたと実感できる。他人の子供に永征会を継がせるつもりはない。・・・薫なら分かってくれるな?」

ワカリタイ。苦しい。体中が見えない何かに絡め取られる。両手で顔を覆った。

「でも、・・・でも、大地といられなくなっちゃうっ。そんなのできない、わたしの子なのに・・・!」

「薫」

やんわり抱き締められ、温もりは感じるのに凍える心の芯。

「今すぐじゃない、先の話だ。有馬の籍に入れても母親はお前だぞ、好きに会えばいい、俺が何も言わせない」

優しい響き。いつもなら水が染みこむように溶けるのに。届いてこない。そのままどこかに流れ落ちる。

「・・・そうだな。あと一人でも二人でも弟妹ができたら、お前も寂しくないだろう」

穏やかに笑んだ気配がした。
それが宗ちゃんの最上の愛だと、
揺るぎなくわたしを包んで。




< 107 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop