純・情・愛・人
荒々しく広くんを振り払い、マグマを奥底でたぎらせている宗ちゃんの沈黙。見えない手が喉元を締め付けて、息が苦しい。二人を見ていられない。

「けどなぁ、デキたのが娘だろーと永征会のこたぁ、そっちでカタつけんのが男だったんじゃねぇか?」

責めるでもなく。本心に問いかけるように。

「オレも大地はカタギで育つモンだと思ってたしよ。コウがこんな大バクチ打ったのも、カオルの為だってんなら、親バカとしちゃあ悪い気もしねーわな」

「・・・・・・・・・」

口を閉ざしたままの宗ちゃんの表情が、きつく瞑った瞼の裏をよぎる。きっと。氷よりも冷たい眼でわたしを呪っている。どうして広くんを拒絶しないのか、って。本当にそれはすべて大地の為なのか・・・って。

「朝倉のボーズは役所か?婚姻届、出しちまってんだろ?」

お父さんの念押しに広くんが短く頷いて返した。

「あとはカオルの気持ちしかねぇってこった。宗も今日んとこはいっぺん引いて、頭冷やせや。コウはしばらくウチで預かっとくからよ」

そこまで言ったとき、誰かが立ち上がった気配で反射的に顔を上げた。

「宗ちゃ・・・っっ」

わたしに見向きもしないで座敷から出て行く背中。置いていかれた。捨てられた? チガウ。そうさせたのは、わたし。独りで行かせたのはわたし・・・!!

途端、涙が溢れた。
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