純・情・愛・人
「・・・・・・どうしてそこまでできるの。・・・してくれるの?」

「薫子しかいねぇからに決まってる」

「わたしは・・・っ」

灼けつく胸の奥。分からない。広くんへのこの感情(おもい)にどんな名前を付けたらいいのか。

もし、もしも宗ちゃんが『大地を跡取りにしない』と迎えに来たらわたしは。きっとその腕に飛び込んで。

力なく項垂れる。

「・・・大地を守りたいから広くんを利用したの。宗ちゃんを嫌いになる日なんて来ない・・・」

「それでもお前は兄貴より俺が欲しいんだよ。別にいいじゃねぇか、それで」

わたしの髪をくしゃくしゃっとした手が、そのまま肩を強く抱き寄せた。嫌なら振り払えばよかった。

「要らねぇときは好きに言え。その前に俺に惚れさせる、憶えてやがれ」

不敵に笑った気配。

俺様なのか優しいのか、どっちもなのはもう知っている。もう、年下の幼馴染っていうだけじゃない気持ちにも気付いている。

応えるにはあまりにも自分が頼りなくて。

宗ちゃんが隅まで染み込んでいて。

YESもNOも躊躇った。

「お前は俺に惚れる」

低く鳴り響いた。
震わされた。
頭の天辺から爪先まで。

その声に。



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