純・情・愛・人
「答えなくていいぞ、お前の体に訊く」

「宗…っ、ちゃ」

「素直に啼け」

バスローブを脱ぎ捨てた宗ちゃんがのしかかり、わたしの理性を壊しながら貪る。牙を突き立て、すすり、抉る。

抉られるたび脳髄が灼かれ、灼かれながら誓わされた。宗ちゃんに従順な薫でいることを。

何度果てても終わりが来ない。締め切った部屋で時間から切り離されて、大地の心配をする母親の自分を取り上げられる。

俺だけを見ろ、と飢えた眸でわたしを奪い続ける。

それが愛なのか執着なのか、分からなかった。宗ちゃんが変わってしまったのか、わたしが変えてしまったのか。分からなかった。

それでも。宗ちゃんを拒んで逃げたくはなかった。矛先が広くんに向かうのが怖かった。兄弟で血を流させるくらいなら喜んで人形になる。

もしも宗ちゃんが広くんをどうにかしたら。わたしはきっと一生、赦さない。力の入らない躰をベッドに投げ出したまま(うつ)ろに思う。

最中に着信のあった宗ちゃんは、鳴り止まないスマートフォンを手に寝室を出て行った。

大地と日の当たる場所で笑っていられる未来と引き換えに、わたしになにが残るんだろう……。閉じた瞼の裏に広くんの顔が浮かんだ。

タスケテ。
コナイデ。

込みあげた思いを枕に(うず)める。
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