純・情・愛・人
彼なら、いなくなったことを真っ先に宗ちゃんに問い詰めたはず。・・・危ない真似だけはしてほしくない。大地を大切にさえしてもらえれば、もういい。死ぬまで鳥籠(かご)の中でも。

しばらく経って戻った宗ちゃんはわたしを抱き起こすと、ペットボトルのミネラルウォーターを口移しで飲ませた。声を殺すなと言いつけられて枯れた喉と、熱に灼かれて乾ききった躰に少しずつ染みわたっていく。

口の端から伝い落ちた雫を舐め取った唇が首を這い、また仰向けに沈められても。受け容れ、差し出す。

こんなに抱かれても満たされない。注がれてもいっぱいにならない。どこからか漏れ出て、破けた口がどんどん広がっていく。

「・・・もうすぐ広己が来るぞ」

ふいに耳許で低く。中を突き上げる下半身と上半身はまるで別の生き物のように、淡々と聞こえた。薄目を開け反応したわたしの顎下を捕らえて、無慈悲に目を細めた宗ちゃん。

「ここで暴れられても面倒だ。多少傷めつけてもかまわないと言ってある」

「・・・っっ・・・ッ」

ヤメテ、ヒドイコト、シナイデ!!
掠れた呻きにしかならない声。

「お前のすることは分かっているな?薫」

弱々しく頷いた。逆らったら広くんが。

「・・・いい子だ」

微笑んで見えた。愛という罰でわたしを征服する宗ちゃんは満足そうだった。

そのとき何かが。胸の奥の奥でぷつりと絶えた。音がした。
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