純・情・愛・人
epilogue
「おいコラ日奈(ひな)、大地、コケんじゃねぇぞ!」

「やーだー」

「まてぇー」

来年の今頃は、念願のランドセルを背負っているわんぱくお兄ちゃんと、わりと恥ずかしがり屋さんな二つ違いの妹。

五歳になった大地には宗ちゃんの面影があって、でも性格はどこをどう取っても広くん似。頑固だったり、意地悪したり、優しかったり。

日奈は目鼻立ちがはっきりしていて、お父さん曰くわたしのお母さん似。知らないひとは『パパ似』だと広くんを指す。そのたびにアーモンドアイが弧を描いて本当に嬉しそうだ。

幼稚園が春休み中の今日は、広い芝生で駆け回れ、木陰でピクニックができる大きな公園へ足を伸ばした。

ここには小さいけど動物園もあるし、平日に関わらず家族連れが多い。見渡せばちらほら、レジャーシートにランチを広げ始めていた。

「ふたりとも~、おにぎり食べておサルさん見に行こう~」

追いかける広くんに無邪気にまとわりついた子供達に、声を張り上げる。

「いくー!」
「くー!」

可愛いユニゾン。

日奈を抱え上げ、大地と手を繋ぐ広くんは、見た目以上の300点満点な育メン。日奈の妊娠中も、時には大地の世話をワンオペでこなし、パパママ教室にも進んで参加してくれた。

『礼なんざいらねぇよ、俺が父親だろが』

広くんの口癖だった。わたしの頭をくしゃくしゃにして口角を上げる、その顔が好きで、好きな分だけ切なかった。

お父さんも知らない。
一緒にお墓まで持っていくと二人で決めた。
日奈は。宗ちゃんの子だ。
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