純・情・愛・人
打って変わって淡々と語られた単語の連なりを、意味は理解できていた。法を冒す限りあり得るかも知れないと、理屈ではわかっていた。

でもどうしても、わたしの中の宗ちゃんと結びつかない。現実だと受け止めきれない。

「いつ、・・・ですか・・・? ・・・広くんは知って・・・」

「広己にもあなたのお父様にも、有馬の父が話しました」

二人がわたしに言うはずがない。気遣われた優しさが痛いくらいに辛い。

「私がこれ以上教える義理はありませんし、あなたのことが今でも嫌いです、大嫌い。あなたさえいなかったら宗吾さんは全部、私のものだったのに」

うなだれた視線が地面に縫い止められたままのわたしには、琴音さんがどんな表情をしていたか知る由もない。言い放つ冷たさに苛立ちが滲んで聞こえた。口惜しそうに聞こえた。

「宗吾さんが帰ってくるまで永征会は私が守ります。宗吾さんの帰る場所は私のところだけです、勘違いしないでくださいね」

勘違い。その五文字を無意識になぞる。

「要らない物を処分しておくように言われたので棄てるつもりでしたけど、・・・お返しします。引き出しの奥に仕舞ってあって、宗吾さんにはもう必要ないでしょうけど、あなたのものですから」
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