純・情・愛・人
殉・恋・花(番外編②)
「オーナー、ダクト工事の件で業者から電話があったすけど」

「俺の携帯にかけさせろ」

「広己さんちょっと」

「いま行く」

岸川組に世話になってた頃のノウハウや、豪のツテを元手に、多少グレーな商売もしながら、惚れた女と二人の子供には金に困らない暮らしをさせてる自負はある。

長男の大地は中等部二年、下の日奈は来年の春で小等部卒業だ。生意気は赦すが、筋を通さねぇときは遠慮なく泣かせる。薫子を泣かせたら問答無用でぶっ飛ばす。親子の力関係はハッキリさせるのが俺の流儀だ。

毎晩そろって飯を食い、今夜は薫を軽く可愛がった後で、最近手がけたボーイズバーのバックヤードに顔を出した。

いくつか指示を飛ばし、数字をチェックし始めたときだった。テーブルの上でスマホがバイブ音を鳴らした。

着信画面に表示された名前に一瞬、目を瞠る。天と地がひっくり返ろうが、二度とかかってくることはねぇだろうと思っていた。

「・・・カンベンしろよ兄貴。明日は地球が滅亡すんじゃねぇだろうな」

『お前も相変わらずのようだな』

話すのは何年ぶりだ?十年、・・・もっとか。

「俺に電話よこすなんざ、よっぽどだろ。聞きたくねぇぞ、ったく」

『それでも聞け。・・・広己、じきに俺に令状がおりる。有罪は確定だろう』
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