純・情・愛・人
寝耳に水だった。・・・岸川組がゴタついてたのは豪から聞いてる。まさか兄貴が泥かぶったのか?

「何やってんだ、らしくねぇだろが・・・!」

ひそめた声を荒げた。

極道は生きるか死ぬかの大バクチだ。だが兄貴は外さねぇと、バカ正直に思い込んでた手前ェに苛つく。俺がいりゃそんなマネさせねぇよ。今さら口をついて出そうになった。

『永征会を潰さずに済むなら安い話だ。お前に心配されるとは俺も焼きが回ったか』

「ヒマじゃねぇんだよ俺も。用があるなら早く言え」

覚悟は決まってやがるんだろう。淡々と落ち着き払った言い草に、どうにか余裕ぶって皮肉で返した。

アタマ冷やせ。プライドへし折ってまで話があるってなら、ひとつきりじゃねぇか。

「縁は切られたが元は兄弟だからな、無下にはしねぇよ」

『・・・・・・薫と親父さん達を頼む』

スマホの向こうでクラクションが遠く響いた。声だけがやけに静かだった。

「昔の男ヅラか?気に入らねぇな」

『何があっても極道に戻るな。お前はお前のまま、意地をつらぬき通せ』

次は説教かよ。と突っぱねかけたのを飲み込んだ。まるで反抗期のガキくさい手前ェが笑えた。

「俺を誰だと思ってやがる。腐っても兄貴と同んなじ血が流れてんだ、その辺の半端モンと一緒にすんじゃねぇよ」
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