純・情・愛・人
「薫」

「ふぁい・・・?」

半分まどろんでいた。夜も更け、体力も底をついて。

「寝るなら風呂に入るぞ」

不意に温もりが離れたのを、重い瞼をこじ開けながら宗ちゃんを追ってバスルームへ。熱めのシャワーを頭から浴びれば一気に眠気も飛ぶ。

「洗うね」

バスチェアに腰かけた宗ちゃんの肩からお尻まで丁寧に、泡立てたボディタオルを滑らせていく。

まるで半袖のTシャツを着ているみたいに、鮮やかな和彫りで彩られた背中。桜の花びら、龍の鱗、猛々しい虎。

初めて抱いてくれたあの日、目にした時の心の震えは今でも憶えている。綺麗だと思った。独り占めにしたかった、誰にも触らせたくなかった。叶うなら。

「宗ちゃんの背中って、ぜんぜん見飽きない」

「薫は間違っても入れるなよ?女は白いままが一番だからな」

「宗ちゃんに嫌われるようなことはしませんよーだ」

「・・・いい子だ」

淡く笑った気配がした。

わたしの世界は宗ちゃんが太陽で、月。
真昼も真夜中も嵐でも、
陰ることなくわたしにだけ射し続ける光。
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