純・情・愛・人
引っ越したと言っても、自分のプライベートな時間をマンションで過ごす感覚で。

仕事のあと家に帰ってご飯を作り、お父さんを待って一緒に食べるのもこれまで通り。その方が食材が割安なのと、お弁当用のおかずの手間うんぬん。

ゴミ出しや風呂掃除は元からお父さんの係だったし、『掃除ぐらい楽勝』とドヤ顔をされているけど、放っておけばテレビ台やラックがほこりを被るのは時間の問題だ。土日休みのうち一回は顔を出すのを宣言した。

『家出た娘がホイホイ帰ってくんのもよー』

文句をつける振りで目が笑うお父さん。宗ちゃんが一喜おじさんの息子じゃなかったら、相手が極道と知った時点で、何がなんでも別れさせたと思う。

お父さんにとってもおじさんは反社会の人間じゃなく、かけがえのないたった一人の親友。だから娘の気持ちを無下にしないでくれた。全てが割り切れなくても。

どんなに純粋でも。“普通”じゃないことは正しく見えない。

それでもわたしは。
宗ちゃんは。
お父さんは。
おじさんは。
・・・広くんも、きっと朝倉君も。

懸命に誰かを想って。生きている。



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